2024年10月6日日曜日

1-11. 古事記物語4「天の岩戸」

  天地が真暗闇となった事態に、八百万の神は困り果て、天の安河原に集まり色々話し合いますが良い考えは出ません。そこで「知恵の神」と尊敬される思金神に相談しますと、思金神の考えたのは「祭」でした。早速 神々は祭りの準備に取り掛かります。



まず、暗闇の中ででも、長く尾を引いて鳴く鶏を沢山集めて、岩屋の前でひっきりなしに鳴かせました。鶏を鳴かすことは太陽の出現を促す呪術だったからです。次に鍛冶の神に命じて八咫鏡をつくらせ、玉造の神に命じて長い玉飾りの八尺勾玉を作らせました。これで必要な神器が揃いました。(この時作られた鏡と玉が、のちの天孫降臨の時に地上にもたらされた天皇皇位の印である『三種の神器』のうちの二つです。)

そして天の香具山から枝ぶりの良く茂った榊を根ごと掘出し、岩屋の前に立てました。そして八尺勾玉を上の枝に取りつけ、八咫鏡を中の枝に取り付け、白や青の布を下の枝に取り付けました。そして二人の占いの神が、なにとぞ早く日の神が岩屋から出てきてくださいますようにと祝詞をのべ始め、一番の力持ちの天手力男神がこっそりと岩屋戸の端に隠れました。



神楽が始まり天宇受売命が踊り始めました。天の香具山の蔓を襷にかけ、真榊を髪飾りにして、手には笹の葉を束ねて持ち、逆さにした桶の上で踏み鳴らし、手拍子足拍子も面白く、着物はだけて胸乳や腰もあらわに、おもしろおかしく踊りまくりました。八百万の神々はすっかり喜んで手を叩いて笑い転げたので、高天原が揺れ動くかと思われました。(下の絵は、小杉放菴「天宇受売命」出光美術館蔵)



この時、天照大神は不審に思い、岩屋戸を少し開けて内側から次のように言われました。「私が洞窟の中にこもっているから、高天原も地の国も真暗のはずだけど、この騒ぎはどうしたことです。天宇受売命は何故そんなに踊っているのです? 見物の神々は、どうしてそんなに大声で笑うのです?」

天宇受売命はそれにこたえて「あなた様より尊い神が、ここにおられますので、私達は嬉しくてなりません。それで笑ったり踊ったりしているのです」と申し上げました。



こうしている間に二人の占いの神が、岩屋戸の隙間に八尺鏡を差し入れました。すると天照大神は鏡に映るご自身の姿を、自分と同じような太陽の神が別にいると勘違いして、びっくりされました。そして不思議に思い、ゆっくりと岩屋戸から外を覗こうとしたとき、戸の脇に隠れていた天手力男神が、天照大神の御手を掴んで外に引き出し、すかさず占いの神が、後方の岩戸に注連縄を張って「これより内側には二度とお入りにならないでください」と頼みました。


こうして天照大神が再び姿を現したので、高天原も地の国も、また以前のように明るく照り輝くようになりました。大事件はめでたく収まったのですが、その原因となった須佐之男命をどうするかと、八百万の神は再び天の安河原に集まって会議を開きました。その結果、須佐之男命には罪穢れを祓うための品々を納めさせ、髭を切り、手足の爪を抜いて、高天原から追放しました。 ここからは須佐之男命の新しい物語が展開します。



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