(古事記は壮大な神話・歴史ドラマなので、中々読み通すことができませんが、 「まんがで読む古事記」全7巻(久松文雄:青林堂)は、原作に忠実で分かり易く、絵もきれいなのでお勧めです)
父神から追放された須佐之男命は「それでは仕方ありません。お姉さんの天照大神に別れ告げお母さんの国に出かけましょう」と、高天原へ登っていきました。天照大神の方は知らせを聞いて吃驚しました。何しろ、乱暴者の弟が次第に近づいてくるにつれて、山も河も轟々と鳴り響き、まるで地震のように地面が揺れます。「弟が別れを言うために、わざわざ高天原に来るとは思えません。きっと私の国を奪いに来たのでしょう」と大神は考えました。そこで完全武装して尋ねました。「おまえはなぜ私の国にやってきたのです」
須佐之男命は「私に邪心はありません。ただ父神から、私が泣きわめく訳を聴かれたので『私は、亡き母の国に行きたいと思って泣いているのです』と申し上げました。すると父神は『おまえはこの国にいてはならない』と仰せられ追放なさったので、姉君においとましようと参上したのです。やましい心はありません」と答えました。
しかし天照大神は納得できず「ならば
お前の心が清明なことをどう証明しますか?」と聴くと、須佐之男命は「ならばお互いに誓約(うけい)をして子を産みましょう」と提案します。誓約とは 予め決めたやりかたで現れた結果で吉凶を判断する占いの一種です。
姉弟は天の安河を挟んで立ち、まず天照大神が、弟の腰の剣を受取り三段に折って河のほとりの真名井の湧き水ですすぎ、それを口に入れて嚙み砕き、ふっと噴出した息の霧から三人の娘が生まれました。宗像三女神の多紀理姫、沖津島姫、多岐都姫です。
今度は須佐之男命が、姉から玉飾りを貰い、同じように真名井の湧き水ですすぎ、それを口に入れて嚙砕き、ふっと噴出した息の霧からは、天忍穂耳命(瓊瓊杵尊の父)をはじめとする五人の男神が生まれました。
誓約の儀式が終わると、天照大神は「後から生まれた五人の男の子は私の持ち物から生まれたので私の子です。初めの三人は、お前の持ち物から生まれたのだからお前の子です」と言われました。
すると須佐之男命は勝ち誇り「私の心が明るく清いから、たおやかな女の子が生まれたのです。だから私の勝ちだ!」と勝ち誇り、天照大神の田の畔を壊し、溝を埋め、神聖な御殿に糞をまき散らして、高天原で大暴れしました。
この酷い乱暴狼藉にもかかわらず、天照大神は「糞をまいたというのは、酔って吐いたものでしょう。また田の畔を壊し、溝を埋めたのは、耕せば良い田圃になると思ったのでしょう」とかばい続けます。しかし弟の悪態は度を増し、天照大神が神の衣を織らせていた機織小屋の屋根に穴を開け、そこから皮をはいだ馬を投げ入れました。機織女たちは驚き、そのうちの一人は驚きのあまり道具にぶつかり死んでしまいました。
これには天照大神もカンカンに怒り、天の岩屋の洞窟に入り、入り口をぴたりと閉めて、もう出てこようとはしません。天照大神は日の神、太陽の神ですから、天にある高天原も、地上の国も、いっぺんに真暗闇になってしまいました。太陽がない夜だけの世界になり、今まで隠れていた悪い神々が騒ぎ、色々の災いがいっぺんに生じてきました。
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