4年近くも悩まされたコロナ禍ですが、より穏やかな株へと変異を重ね、漸く日常の日々が戻ってきました。 東京の街歩きが好きな家内はコロナ疲れで鬱々の日々でしたので『北海道の温泉旅行にでも行くか!』と、令和3年秋、洞爺湖・登別の温泉三昧旅行に出かけました。 家内を癒すのが目的でしたが、初日苫小牧泊して『人生の師匠=下山さんに会いたい!』 という思いが募りました。
下山さんは肝臓・心臓病もちなので、2日目朝に恐る恐る『今から10分ほどお伺いして良いですか?』と電話すると 『おう、夕方から大岸さんと山梨に行くけど、午前中なら大丈夫だから直ぐ来いや』 という返事です。誠に有難い先輩です。さっそく家内と訪れると変わらぬ温かい笑顔で迎えられました。そして20年間取組む水彩画の素晴らしい作品群や、2階のアトリエ、作品庫など時間を忘れて堪能しました。
下山さんは深刻な不整脈で、平時心拍数40~50が、突然100以上を打始めて苦しむ難病です。心臓カテーテル・アブレーション(肺静脈から発生する刺激を心房に伝わらなくする電気焼治療)を2回受けていますが、半年すると再発します。
『いよいよ本気で終活だ。一番の問題は2部屋に溜った作品をどうするかだ。捨てるしかないかな・・・』と言われる下山さんの作品を見ながら、私と家内は『そんな勿体ない! 私達がほしい!それだけでなくネットで紹介して欲しい人を募りますよ!』 ・・という事で、近々下山さんの作品紹介と「ぜひ欲しい」という希望者の募集を行う予定です。乞うご期待!
1.「自転車」
東京都美術館で開催された「日輝展」で文部科学大臣賞を受賞した作品。
自転車本体ボディの白、車輪スポークの白は全て、塗り残した画用紙の白です。
『このスポークの細く真直ぐな白い線はどうやって描くのですか?』と不思議がる家内。
『それはね、定規で細く切ったマスキングテープを使う塗り残しだ。水彩画なので手書きでこの真直ぐな線は出せないよ』と下山さん
『一番苦労したのは右上の窓だ。実際は此処も全てレンガなのだが、そのままでは絵として面白くない。この自転車に相応しいレンガ窓を探しまくって、ようやく弘前の教会の窓を見つけたよ』
・・名画の陰には、何とも物凄い努力があるんだな・・と、改めて感動です!
繊細で緻密な画風そのままの、見事に整理整頓されたアトリエでした。2枚のパレットも絵具の配列・固化状態が絶妙で、まるで『日本画製作中の東山魁夷』という雰囲気で、さすが下山さんだと感心しました。 『心を打つ名画は、整理整頓されたアトリエから生まれ続ける!』と納得しました。
3.『今製作中の四輪バギーだ。全行程の2割くらいかな・・』
『超写実主義の名画』の製作途中を拝見できてとても参考になりました。
デッサンの後、薄い下塗から段々と重ね塗りしていく・・本当に根気のいる仕事で、現役時代の下山さんの仕事の取組みそのままです。
4.『これは二男が小学生時代に描いた油絵だ』
(家内)『エ~ッ! 天才ですね! 今も描いているんですか?』
(師匠)『中学以降はスポーツに夢中で油絵はやめたよ。その後50歳代になる今も絵は描いてないな』
(家内)『エ~ッ!勿体ない!そのまま続けていたら、今ごろは天才画家として有名になっていたのに!』
5.下山さん初期の傑作『おばあちゃん
かって30年以上同居した義母ちゃんへの限りない優しさと思いやりが込められた傑作中の傑作です。 実物を見た家内は、この絵の前から離れられませんでした。
6.屋根裏部屋の『作品庫』
『私、この絵が欲しい! 捨てるのなら下さい!』
『おお、どれでもいいからもってけや』 と言われるまま、早速5枚ほどもらって帰りました。我が家の家宝となりました。
7.『波止場のアンカー』
私達がつい見過ごす当たり前の風景や事物にも、下山さんの視線が留まると、ドラマを含んだ味のある名画に変身します。 サビついたアンカーに舟人の信頼の歴史が・・ しっかりと巻き付いた縄に、漁船の安心感が!
8.『またいつでも来いや!』
いつも豪快で、繊細で、温かい心の師匠です。
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