2024年2月3日土曜日

9. 若者の夢と現実とストレス

ストレスの多い現代社会です。
それに加えて、長引くコロナ禍自粛生活やテレワークで、ストレスは現代若者に重くのしかかります。元々ストレス症・うつ状態は、誰でも罹る可能性がある『心の風邪』です。
◇乳幼児期は、共稼ぎの親の愛に飢え、少子化で過保護に陥ったりします。
◇小中高期は、常態のイジメを気にして目立たない様に自分を押さえます。
◇大学では、目的・目標がなく、不安を覚えながら漫然と過ごします。
◇社会に出ると、学生時代からは想像できない厳しい現実に直面してノイローゼやうつ病になり、直ぐ会社を辞めてしまう若者が後を絶ちません。
◇ベテラン社員は、力量以上の過負荷を与えられても中々拒否できません。
◇退職後は、超高齢社会到来で、年金先細りや医療費の増大、認知症・寝たきり・介護等を気にしながら細々と生きることになります・・・

 そういう厳しい現実社会の中で生きる私達、特に若者達は、いつも 自分の心の状態を把握し 『自分らしい生き方』 や『納得できる目的・目標・目指す姿』をしっかり持っていないと、厳しい環境や人間関係に振り回され、押し潰され、自分らしさを見失い、やがては進退窮まって病気になってしまいます。しかも心は眼に見えない為、自分自身も周囲の人も中々変化が分からず、顕在化した時には、ストレス症がかなり進行しているという事になりかねません。
 そこで今回は『自分の心の状態を知るにはどうするか?』の簡単なチェック方法と、各年代層の人達がどのようなストレス状態にあるかの実例を示しますので、是非ご自身の心の状態と対比して、より良い生き方を考えるヒントにしてください。
さて、ここで日頃の学校や職場での自分を振り返ってみましょう。 次の図の大きな木は、あなたの学校や職場です。あなたは学校で勉強している時、職場で仕事をしている時、下左図中どの位置のどの人が 自分の状態にピッタリだ!』 と感じますか? 自分の心理状態に近いと思う位置の人に、○印を付けてみて下さい。 あまり真剣に考える必要はありません。直感・インスピレーションを大事にしましょう。
この沢山の人は、大別すると上図右の5つのタイプに分類されます。
   ①  Aは、新しい勉強や仕事に就き、一生懸命努力している状態を現しています。社会人1~3年目は、ほぼ全員Aを選びます。まだまだ一人前ではないと自覚しています。若手社員だけでなく、ベテランでも転勤や職務変更があると、またAからやり直しです。
  Bは、成績が良い学生、一人で担当する仕事である程度の実績を上げている人です。でも周囲があまり認めてくれていないので、多少孤独感を感じています。
  Cは、自分の能力ぎりぎりか、能力以上の勉強や仕事を抱え、病気寸前、ダウン寸前です。直ぐに上司先輩や周囲の頼りになる人に相談する必要があります。また、自分の周囲にこういう元気のない人がいた場合、声を掛けて相談に乗りましょう。
  Dは、学校・職場仲間と和気藹々と楽しく勉強・仕事をしています。是非更に発展させてください。
  Eは、独力で高い成績・業績をあげ、高い専門分野で活躍している人です。是非その高いレベルを維持し、周囲や若手・後輩のレベルアップにも影響を与えて下さい。

私は、長く担当してきた企業内教育研修の冒頭に、参加者のアイスブレークと自己診断として、上図の簡易ストレス診断を実施してきました。 その目的は、飽くまで『教育研修に参加した人が自己を知る』 ことですが、参加対象年代や立場により一定の傾向がある事に気が付きました。一人一人の性格や心理状態、価値観は、みんな違いますので一律に論じることは出来ません。 しかしそういう中でも自分の置かれている環境や立場によって、大半の人はどういう心理状態になっているかを知る事は、自分の成長の為にも、また部下後輩指導の為にも重要な事です。 極く限られた対象のデータですが、皆様方ご自身や部下後輩育成指導の参考にしてください。

1. 大学入学後半年(工学系GK) のストレス分布と、10年後予測
 これは、ある私立工学系大学1年生の入学半年後のストレス状況と、10年後に職場でどういうストレス状態になっているかを予測した分布図です。GKも入学半年後の現在は、一生懸命頑張っている 【① A】 が約半分です。 気になるのは、地上で大木を見上げている学生の多さです。『大学の勉強は思った以上に大変だ』 と思っている学生の多さと一致します。 また、地上に突伏している人と、今にも枝から落ちそうな人、既に落ちている人を選んだ学生は、『欠席が多くグループ討議に参加できないコミュニケーション不得意は学生』 と一致します。
しかし、10年後を予想した自分の姿は、真ん中の上半分のEDに集中しており、『頑張って充実した大学生活を送り、就職後も頑張って6年後には高いレベルで活躍している』 と予想しています。これは、この大学の学生が真面目に勉学に取組んでおり、前向きで健全な学生生活を送っていると評価する事が出来ます。

2. ある工場新入社員(交替勤務)の入社直後と半年後のストレス度 (工高卒と高専卒の違い)
この工場では工高卒も高専卒も、入社した直後は 『一生懸命頑張っている真ん中』 に集中しており『良い会社に入社できた!』と夢と希望に満ち溢れた気持ちが表れています。 しかし半年経過すると、工高卒と高専卒ではストレス分布に明らかな差が出てきます。
工高卒は、低い枝から今にも落ちそうなひとの割合が半分くらいになり、根本で頑張っている割合も増えています。 枝から落ちている人、根本で寝そべっている人を選んだ社員は、その後ストレス症で出社できなくなったり、退職した者がいます。これは 明らかに職場のい要求についていけないことを示しています。 原因は、2年の専門学力ハンディがある高専卒と同じ育成メニューで早期修得を求められる事にあり、当然の結果と言えます。 ハンディ期間を埋めた別メニューを用意しなければ不公平であり、この不幸な状態は解決しません。
他方高専卒は、半年後に約半数が右端に偏っており『大きな負荷も感じず、向上心が薄く、孤独でアウトロー的な心理状態にある』という事を伺わせます。 入社半年後でこのような状態は大変な問題であり、早急にその原因を究明し、抜本的な改善策を打たなければ、本人達だけでなく会社の将来が危うくなります。 最近では、運転員の大半を高専卒としているためこの懸念は益々大きくなっています。
 他方高専卒は、半年後に約半数が右端に偏っており、『大きな負荷も感じず、向上心が薄く、孤独でアウトロー的な心理状態にある』という事を伺わせます。 入社半年後でこのような状態は大変な問題であり、早急にその原因を究明し、抜本的な改善策を打たなければ、本人達だけでなく会社の将来が危うくなります。 最近では、運転員の大半を高専卒としているためこの懸念は益々大きくなっています。

3. 同工場の50歳台後半の交替勤務者のストレス度
 この会社は定年制がなく、高度成長後の長い不況時でも解雇リストラは行わない代わりに、新規採用を10年以上停止し、世界一少人数で運転できる体制を確立する事により、他者のリストラ・人件費削減に対抗しコスト競争力を維持しました。 しかし最近その精鋭達が退職期を迎え、新規採用を開始しましたが、ベテランと同等のスキルを身に着けるには10~20年間を要し、ベテランに65歳まで勤務延長して貰う事が必要不可欠の状況になりました。
 そういう背景のもとで実施した50歳代研修でしたが、肉体的にも精神的にも過酷な交替勤務を30~40年間も頑張ってきたベテラン運転員の本音は、『60歳でやっとこの緊張の連続で過酷な勤務から解放される!』 ということであり、当初60歳以降も勤務を希望する人は30%程度でした。
 その緊張と過負荷でギリギリ頑張っている姿を、上記のストレス図は見事に表現しています。
 しかし50歳代(退職後生活設計)研修で、2日間じっくりとこれからの人生を考え、【年金支給開始65歳の厳しい現実、年金や退職金が老後の安定には不十分である事、60歳での再就職の困難さ 等々】 を理解していき、金銭面でも生き甲斐やり甲斐の維持継続の為にも、60歳以降も継続勤務する事が良い事が納得でき、今では70%以上が勤務延長して頑張っています。
 『一生勉強、一生成長、一生社会の役に立つ存在であり続けること』
 これは、あらゆる世代、あらゆる立場の人に課せられた人間の使命です。
 それを全うする為には、時々ストレスチェックして、『後ろ向きになっていないか? 疲れ過ぎていないか? 楽しすぎていないか?』 を自分自身で確認し、リセットする事が必要です。

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