2024年11月7日木曜日

1-6. 相手・自分を大事にする自己表現

 「職場や家庭で、より良い人間関係作りに役立つアサーション」

 現代は、長引く不況、少子高齢化、大震災、コロナ禍、ウクライナ戦争・ パレスチナガザ紛争・・などが複雑に絡み合って、とても暮らしにくい世の中になっています。 そしてそのしわ寄せは、老人、若者、女性といった社会の弱者に集中してきています。

 若者が厳しい就職戦線をようやく潜り抜けても、入社3年以内に高卒の半分、学卒の3人に1人が会社を辞めています。その大半は、仕事が厳し過ぎるというよりも、先輩社員との人間関係がうまくやっていけないという理由がほとんどのようです。

自由気ままに過ごしてきた学生生活から、社会人となった3年間は、自立した大人への脱皮に必要な期間であり、これを乗切れば、次は有能なビジネスマン・ウーマンとしての活躍の場が開けてきます。その企業人としての助走期間は今も昔も変わらないのですが・・高度成長期に育ったベテランがハングリー精神を持ち打たれ強いのに対し、『現代の若者は大事に優しく育てられており』、少しのプレッシャーやストレスに耐切れなくて、直ぐ退社してしまうようです。

⇒『若者とベテランの意識ギャップ』   http://kamuimintara.blogspot.jp/2012/04/blog-post_15.html

それではどうすれば、この『魔の3年間』を乗り切れるのでしょうか?

その一つの方法が『アサーション』『アサーテブに生きる』 です。

以前TA研究部会で、アサーションを日本に紹介・導入された第一人者の平木典子先生の講演を聴講しました。日本導入に当たり平木先生が苦労されたのが『アサーションをどう訳すか』 だったそうです。 元々日本には『アサーション(思った事を素直に表現する)』という概念がなく適切な言葉がない為に訳すことが出来なかったのです。



『アサーション』 は、多国籍社会であるアメリカで少数民族の人達が、言いたい事を表現できず社会の最下層で苦しんでいるのを何とかしようとして生まれました。 日本では、高度成長期になって、高等教育を受けた主婦達が家庭に入ると、今まで通り自己主張を押さえられて悩んでいた為に導入されて広がりました。そして今、人間関係で悩む色々な人たちに受入れられ広がってきています。



 それでは一つ質問です。次の場面で、あなたがとる行動はどれですか?

【ケース1】 

午後3時、あなたは部長から明日までに完了するようにと指示された販売資料を必死で作成しています。 そこに課長が困りきった顔で「忙しそうだが、大事なお客さんから見積りを依頼されて今日中に届けなければならなくなった。今の仕事を中断して2時間で作成してくれないか?これが出来るのは君しかいないのだよ。」 と言いました。さてあなたがとる言動は、次の3つのうちどれでしょう?

  部長からの仕事が目一杯なので、つい感情的になり、『何でそんなに急な仕事を押し付けるのですか。私は他の仕事で手一杯なので、課長が自分でやるか、お客さんに延期して貰ってください!』 と、突っぱねる。

➁ 内心(何でこんなに切羽詰ってから言うんだ。部長の指示は課長も知っている筈じゃないか。そんなに急ぐのなら自分でやれば良いのに)と思いながら断りきれずに 「分かりました。」 と引き受けてしまい、(あ~あ、今日も徹夜か・・・) と恨めしく思う。

  『大事なお客さんの依頼で急いでいることは分かりました。でも今、取組んでいる部長指示の仕事が期限通りに出来るように必死でやっているところです。課長から部長に相談していただいて、今の仕事は明後日迄の仕上りで良いかどうか調整してもらえませんか。

【ケース2】 

あなたは、友人と一緒にレストランで夕食をとっています。先程ステーキをレアで注文しましたが、ウエイターが運んできたステーキはウエルダンに焼き上がっていました。さてあなたがとる言動は、次の3つのうちどれでしょう?

  ウエイターに注文通り出ない事を大声で怒鳴り、もう一度注文通りのステーキを要求する。友人は料理に満足したが、怒鳴った事で気まずい雰囲気になり、ウエイターも侮辱されたような不機嫌な顔になっている。

  友人に『注文通りになっていない。もうこのレストランには来ないぞ』と愚痴をこぼすがウエイターには何も言わず笑顔で受け答えをする。折角のステーキはまずく、注文通りを要求できなかった事を後悔し友人にも申訳なく思う。

  ウエイターを呼び、『自分はレアを注文したが、ウエルダンが来てしまった事』を伝え、丁寧にはっきりと 『レアのステーキと取り替えて欲しい』と頼む。 ウエイターは間違いを謝り、まもなくレアのステーキを運んでくる。友人も自分も夕食を楽しみ、ウエイターも客が気持ちよく過ごしたことで気分が良い。

さて結果はどうでしたか? これに似た場面は日常茶飯事的に発生し、その時の立場もまちまちです。こうして活字にして冷静に考えると、③が望ましいのは当然ですが、同様の場面で日本人が取る態度は『立場が上なら➀、立場が下なら➁が殆ど』で、日常的に③のスタンスで対応できる人はあまりいません。

そしての対応を取り続けると、我慢の限界を超えて突然『キレル』ことになります。それが 『若者が職場の人間関係に適応できなくて退職する原因の大半』 を占めます。

また、最近の若者の中には、ケース1の場合に『できません!』 の一言で、あとは取り付くシマがない態度の者が増えています(幼稚な➀)が、これではビジネスの場面にはとても通用しません。こういう精神的に幼児性が抜けていない若手社員は、家庭や学校での甘えから来ているもので、なかなか社員教育や職場指導で直せるものではなく、今後大きな社会問題になる事が懸念されます。

上のケーススタディで、

➀は『攻撃的(アグレッシブ)』

➁は『非主張的(ノンアサーティブ)』

は『アサーティブ』

と言います。この3タイプの自己表現の特徴を整理すると次の通りです。



老若男女・上下に関係なく、この 『相手の対場を思いやり自分の言いたい事も素直に表現する=アサーティブな関係 (お互いWinWinの関係)』 が、これから求められる人間関係、コミュニケーション、職場雰囲気の理想的姿であり、住み良い社会実現の第一歩であると言えるでしょう。そういう意味では、強い立場にある上司やベテランにこそ必要なスキルです。

さてこの➀と➁のタイプの特徴を見て何か思い出しませんか? そうです『ドラエモン』のジャイアンとのび太です。


 

日本人の80%はノンアサーティブ(非主張的)と言われます。つまり『のび太を見ているとまるで自分自身を見ているような気分』にさせられ、理不尽なジャイアンの仕打ちで困惑するのびたを助けるドラエモンに拍手喝采を送るのです。しかし現実にはドラエモンは現れてくれません。現実の世界では、自分の力で何とか乗り切らなければならないのです。その解決法がアサーティブな「出木杉くん」の対応です。





「自分もノンアサーティブ(非主張的)だ!」と自覚された方は、アサーティブなマインドを持つように日常的に努める必要があります。目の前の相手のアグレッシブな対応にビックリした時には、一度深呼吸して「冷静にアサーティブに対応し、アサーティブな返事をかえす」ように心がけ、実践(訓練)していくことを薦めます。 そうすれば『抑圧されている重圧感』から少しずつ解き放たれ、相手との建設的な関係ができてきます。



 

推薦図書 『アサーション・トレーニング(爽やかな自己実現の為に)』

 著者:平木典子(金子書房 発行)


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