2024年2月2日金曜日

5. 永遠の愛に生きたデーケン先生

敬愛するデーケン先生が、令和2年9月6日旅立たれました。

デーケン先生はドイツ生まれです。12歳の時に眼前で町が破壊され友人や祖父が目の前で無残に死んでいき、占領軍のソ連兵が東ドイツの全ての成人女性をレイプしていく様を見て、絶望感に打ちひしがれていました。 そういう時に図書館で出会った本 『長崎の26聖人殉教者伝(12歳のルドヴィコ・茨木)』です。その生き方に感動し、日本への憧れを募らせ、遠い日本にわたり布教活動を始め、ついには日本に帰化されました。そして自分の人生体験から『死生学=より良く生き、より良く死を迎える』を提唱し、日本人として61年間 私達のより良い生き方を導いていただき、88歳で天寿を全うされて天に召されました。 以前書いた『デーケン先生の “永遠の愛”に学ぶ』を再紹介し、先生への心からの感謝、追悼として捧げます。

 『デーケン先生の “永遠の愛” に学ぶ』    2012年8月

アルフォンス・デーケン先生は、死生学・ホスピスの第一人者です。『死を見つめて人間らしく生きる』という重いテーマに取り組んで講演会を重ねられていますが、その実、5分に1回は ほのぼのと暖かいユーモアと笑いに包まれる素晴らしいお話です。 

先年、自殺願望の9名の若者が、座間市の殺人鬼の誘いに乗って命を無くすという悲惨な事件がありました。 世の中にはあのような想像を超えた危険な人物がいる事を覚悟しなければなりませんが、その前に『自殺したいほど苦しい人々』 は、是非デーケン先生の書籍に触れ、その珠玉の言葉に耳を傾けてもらいたいと思います。 

先生は1932生まれの80歳ですが、『私は、日本人53歳です。』と自己紹介されます。1959年日本に憧れて来日。上智大学講師・教授・司祭として、また厚労省や文科省の顧問として活躍され、こよなく日本人を愛して生きてこられた、明るく若々しい友好的な先生です。 いつも珠玉のように感動的で含蓄のあるお話で、終始限りない愛でみんなを包んでくれます。 そのお話の中から私が感動した言葉を紹介いたします。

 死を見つめることは・・ 自分にいただいた 「いのち」 を最後までどう大切に生き抜くか、自分の生き方を絶えず問い直し行動していくことです。

私達は、死について学べば学ぶほど、もっと深く生きることについて考え出すようになります。 

私は大腸ガンで大腸の一部を手術し4ヶ月間心が揺れ動きましたが、『人生の危機は自己の価値観を見直すために与えられる神からのプレゼントだ』 と改めて痛感しました。

親の死、配偶者の死、友人の死、自分自身の大病・・「大きな苦しみを受けた人は、恨むようになるか、優しくなるか」のどちらかです。 そういうときに 死を真正面から見つめたら、“本当に生きる、人間らしく生きる”ことを考えるようになります。

自分が必ず死ぬ存在だという認識に立てば、誰でも『生きている時間の尊さ』に気付き、少しでも意義のある人生を送りたいと考えるのではないでしょうか。

人にはそれぞれの個性があり、その人なりの死生観があります。私は自分自身の老いも死も、ユーモア感覚で受け止めて、最後まで笑顔と感謝を忘れずに生きたいと願っています。 

ユーモアと笑いは、愛と思いやりの大切な表現方法のひとつなのです。

職場や学校で、誰か一人が腹を立てると、途端に緊張した雰囲気になります。しかし、笑いながら同時に怒り出すことは不可能です。

私は現代社会のギスギスした人間関係を、こうしたユーモアと笑いの効用で、少しでも暖かく和やかなものにしたいと、いつも考えています。 

『私は、日本人53歳です。27歳で来日して今80歳ですからね。』

『大変なデータがあります。何と日本人の死亡率は100%で、いずれみんな死にます。』

深刻なテーマを語りながら、200名を超える受講生を5分に1回笑わせ、『気がつくと 明るく前向きな力強い生き方が深く心に刻みこまれている・・デーケン先生はそういう不思議な先生です。 

『死生学の創始者』、『日本ホスピスの第一人者』、『上智大学の名誉教授であり司祭』 etc..毎週水曜日の公開入門講座(無料)では、昼の部と夜の部をこなし、その後も個別相談に応じ『アーメンの後はラーメンです』 と、受講生と一緒にラーメンを食べながら気さくに付き合われる。80歳という高齢を微塵も感じさせず、精力的に若々しく色々な活動を展開されています。

『デーケン先生のこの活力の源泉は、何なのだろう?』

『来日して日本に骨を埋める決心をされたのは何故?』

 本当に不思議なデーケン先生ですが、著作を読んで疑問が溶けてきました。まず8歳の時に、大好きな4歳の妹が白血病で他界したときの強烈な体験です。

『幼い4歳の妹が一人一人に別れの挨拶をしながら 「天国で会いましょう」 と言って旅立った。 天国での再会を信じる信仰は、永遠に対する希望の根源である事を、4歳の幼い命が教えてくれた。』

と、毎回この体験を話されます。

『そして12歳の頃、昨日まで一緒に遊んでいた隣の親友一家が、翌日に空爆で黒こげになった姿を目の当たりにしたことは強烈でした。『70年近く経過した今でも目をつぶるとその残酷な光景がまざまざと甦ります・・・』

『ドイツ人同胞のナチスがホロコーストの残虐を行い、それを開放する目的でやってきたソ連兵が、スターリンの許可の下で東ドイツの殆どの女性をレイプした という事実はショックでした。73年経過した今でも心の傷を負ったまま結婚できず一生を終える女性が何と多いことか・・・』

そういった、理不尽に悩むデーケン少年を突き動かしたのが、図書館で出会った本 『長崎の26聖人殉教者伝(12歳のルドヴィコ・茨木)』です。その生き方に感動し、日本への憧れを募らせ、遠い日本での布教活動を始め、ついには日本に帰化して80歳にして日本人53歳です。このルドヴィコ・茨木の話をされるとき先生は「日本人は偉い。私にはデーケンと感じました」と笑わせてくれます

 

<ボランティアで『命の相談電話』 をしている受講生の質問に答えて>

 

(質問) ・・最近自殺前の相談が増えており、中にはビルから飛降りる寸前に携帯電話を掛けてくる人がいます。電話を掛けながら最後に聞こえたドスンという鈍い音が耳から離れません。 『もっと何か出来たのでは・・思い留める事は出来なかったか・・』 と後悔・自責にかられます。

 

(デーケン先生の話)・・大変な重要な仕事をされていますね。自殺寸前の人を思い留らせるのはとても難しい事です。そのような場面では『その人の為に祈る』ことです。 聖書に『祈りは無駄にならない』と書いてあります。 本当は、もっと若い時期に大事なことを教えてあげる学校教育が必要です。『私達の命は父母・神様からいただいたもの。自分が死んだら、自分だけに留まらず父母兄弟や友人達周囲の人を一生不幸にします。』ということを幼い時から繰り返し教えてあげることが日本の教育には必要です。

 詳しくは、次のデーケン先生の著書を是非読んでみてください。

『第三の人生』(南窓社)

『ユーモアは老いと死の妙薬(死生学の薦め)』(講談社)

『良く生き、よく笑い、よき死と出会う』(新潮社)

2 件のコメント:

  1. デーケン先生のご活躍が私に生きる勇気と活力を与えてくださいます。ありがとうございます。先生のご健勝をお祈りいたします。 🙏

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  2. (6月18日Unknownさん)ご指摘ありがとうございます。神父・牧師の違いは本文の趣旨とは関係ないので、先生の書籍の記述通り『日本にあこがれて来日』と訂正しました。私は仏教徒ですが、デーケン先生の書籍や講演を通じて『心を磨く師匠』と尊敬しており、その教えを世の中に広がってほしいと願っています。正直、仏教徒の私には、カトリックもプロテスタントもイエス・キリストの尊い教えに帰依する人たちと理解しており、神父さんも牧師さんもキリストの教えを広める使徒として尊敬しています。

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