2024年3月3日日曜日
9. キャリア開発と元気度イメージ分析
9.新たな自己への旅立ち (元気度)
私達は多種多様な人間関係の中で生活しており、他者との交流を避けて生きることは出来ません。
特に大人になって仕事に就くと、上司・先輩・同僚・部下・お客様等々色々な人達との密接な関わりが必要となり、円滑な人間関係なしには一歩も前に進むことは出来ません。
その一人一人は、生まれも育ちも考え方も全て自分とは異なる人達ですから、中々上手くいかず、時には激しい葛藤に悩み苦しむことも少なくありません。
そういった苦しく厳しい局面から逃げず、相互理解を深めつつ前向きな一歩を踏み出して、共に建設的で共感できる人間関係を築いていけないものでしょうか?
これは、あらゆる人が直面し悩む切実な願いです。
かくいう私も自分の職業人生を振返ると、上司や部下との葛藤の40年間だったな・・と痛感します。その色々な苦しい場面で出会った素晴らしい恩師・上司・先輩・友人・知人方から教えられた事や数々の教訓等により、苦しい悩みや難しい局面を乗り越える事が出来ました。
これから社会に出る若者や、既に社会人となり色々な人間関係の中で悩み苦しんでいる人にとって『何からか解決・打開の手掛かり、身を守る武器になるものはないか・・』という思いから『新たな自己への旅立ち』をテーマとしました。
本ブログを通じて 『交流分析(TA)』 に接して戴き、このTAは私達が遭遇する色々な『人間関係の齟齬・葛藤・悩み・苦しみ』
等を軽減し脱却・解決して新たな建設的人間関係を構築し、しがらみから開放され成長する強力な道標・武器となる筈です。 そして 『心の相談相手・友人、助言者』
として活用いただき、皆様方の更なる活躍・飛躍の一助として頂ければ、幸甚この上ありません。
なお本題名は、40年以上にわたり国内交流分析(TA)の第一人者だった 尊敬してやまない 故 岡野嘉弘先生(元社会産業教育研究所長)の名著 “新たな自己へのたびだち”によります。この本は残念ながら絶版となりましたが『是非入手して勉強したい』 という方がおられましたら、10数冊保管しておりますので、下記にメール戴ければお分け致します。⇒
1.最上の人生を作る三つの力
私達の成長、輝かしい将来は、三つの力 【(1) 過去の重力、(2) 現在の推進力、(3) 未来の引力)】によってつくられます。
若し自分の過去が未来を作る (“過去“を原因とする結果としての”現在” の延長線上にしか未来はない) のだったら、あるいはそう思い込んでいたら、私達の未来は既に決まっており希望は持てません。
しかし実際はそんなことはなく、世の中は既定路線で片付くものは殆どなく、良くも悪くも想定外のことだらけです。 従って、 もし未来に自分が描く良い結果(夢)を起こしたいと思ったら、その良い原因となる行動を今起こせば確実に実現できるのです。 これを『未来の引力』 と言います。
私達の心は、生誕から発達し、その形成段階は三つに分けられます。これを心の三重構造(=感情・思考・行動傾向) と言います。私達は普段、この三重構造の心に支配された心の動きを意識せずに、色々な感情を抱き、考え判断決断し行動しています。従って輝かしい未来を実現するためには、『客観的な眼で、自分の心の三重構造をしっかりと分析し把握する事』 が重要になります。
気質・・持って生まれた心の特性 一生変わらない)
性格・・12歳頃まで両親・兄弟等の影響で形成される心の特性
人格・・12歳以降、周囲の人間関係・環境の中で体験学習し身に纏う
対処法・処世術。 別名『仮面(ペルソナ)』ともいわれる。
②元気度イメージライン分析(点から線への展開)
私達は普段、『生まれた時から形成された自分の心の三重構造(人生脚本)を把握する事の重要性』 に気付かずに生活していますが、本当は『自分の心の働きの癖』
をしっかりと把握できていれば、人間関係で悩むことも少なくなり、より友好的でポジティブな人生を手に入れることができます。
その有効な分析手段が『元気度イメージライン分析』です。私達は、その時々の出来事や問題点・壁などに直面して悩み苦しんで
『どん底だ!』と嘆いたり落込んだりします。またうまく行った時は喜び『最高!』 とはしゃいだりします。そういった大きな出来事の時の気分を繋合わせたものが、『元気度イメージライン』です。そしてその出来事の時、『何故そうなったか、何が教訓となったか』
を突き詰めて考え、自分成長の大事な財産(過去の重力)とする人は、大きく飛躍する事ができます。参考までに、私が40歳台の時(今から約25年前)に作成した元気度イメージライン図(その後50、57歳時見直し) を添付しますので、皆さんが作成する時のサンプルにしてください。
私達の性格や人格の形成に大きく影響するのは、0~12歳までで、特に0~3歳までが重要と言われていますが、この時期の事は殆どの人が記憶していませんので、ご両親や兄・姉さんなどにしっかりと聴いて作成すると良いと思います。
ご自分の「元気度イメージライン」を作成する時は、次のシートを使用してください。変化の激しい時代ですので、将来の事は10~20年先までに留めておいた方が良いと思います。
(2). 現在の推進力・・私の心の形 (エゴグラム : 自我分析)
ギリシャの哲人ソクラテスは『汝自身を知れ』と言っています。しかし生まれてきた 時から現在までの『“過去の重力” によって形成されてきた 本当の自分自身の心』を知る事』は困難なことですが、とても大事な事です。何故なら、輝かしい将来を築く為には、『過去のしがらみや金縛りから解き放たれた自由な心の自分』 が、冷静な判断力で確実な行動をスタートさせる必要不可欠だからです。これが 『現在の推進力』です。
交流分析では『過去と相手は変えられない。変えられるのは今ここにいる自分だけ(Here & Now)』といって、今現在を最も重視しています。その現在の『ありのままの私の心の形、弱み・強味』を可視化して把握できるのが『エゴグラム』 です。
詳細は、以前紹介した下の3項を熟読し、是非ご自身の現在のエゴグラム分析を実施してみて下さい。また1~3年ごとにエゴグラム分析を行い、その成長変化を確認するのも大事です。(興味のある方は、下のURLをクリックしてください)
6. あなたの心はどんな形ですか?
1. より良い人間関係作りの為に
(3). 未来の引力・・『将来ビジョンへのロードマップ』
『最上のものは過去にあるのではなく将来にある。過去に囚われたり、過去を懐かしむだけに終わらず、将来の夢を求めて努力しなさい』
実に含蓄のある名言です。その将来の夢、未来の姿を『単なる憧れや夢物語に終わらせない』 為には、その未来を『自分の将来ビジョン』 として、短期・中期・長期の計画(ロードマップ) を立てて、常に意識して行動していく事が重要です。
9. 繊細で孤独な若者の心の充足を
1.『人の心は
ふれあい(ストローク)で形作られる』
人間の肉体は、栄養や睡眠や清潔が必要で、それなしには健康に生きていくことが出来ません。同様に『人間の心の健康にも栄養=人とのふれあいで得られる刺激が必要』で、これがないと、人間は心のバランスを失い、心の健康を保てなくなってしまいます。
この人との接触から得られる刺激を『ストローク』と呼びます。その意味は『なでる、さする、愛撫する』という意味ですが、交流分析では『ある人の存在を認めるための行動や働きかけ』と定義しています。
私達は生まれた時から、抱かれたり、あやされたり、愛撫されたりしてストロークを受けながら育ってきました。それらが私達の神経系統の適切な刺激となって、健全な心身の発達を促進してきたのです。心理学者エリック・バーンは『幼児期に十分なストロークが与えられないと、その子の脊髄は委縮し、肉体的にも、情緒・精神的にも成長が遅れる』ことをつき止めました。
【故 岡野嘉宏著「新しい自己への出発(廃版)」P61に実例として「スーザンという女の子」の記録映画の話が出ていますので別途紹介します。】
子供は成長につれて言葉を覚え、言葉で生活できるようになります。そうすると今までの『肌の触れ合い』から、ほめられたり頷かれたりして、自分の存在や価値を認めてもらう『心のふれあい』を求めるように変わっていきます。このような言葉や無言の動作によって与えられるストロークの事を『心理的ストローク』と言います。
ただ心理的ストロークを求めるようになっても、それだけで満足するものではなく、子供から大人になっても肉体的ストロークは必要なものです。
私達のストロークには「肯定的ストローク」と「否定的ストローク」があります。それを整理すると次の表になります。左の緑の状態の時私達は存在を肯定され、豊かで幸福感に満たされます。反対に黄色やピンクの状態の時は、存在を否定され悲しくなり、ひどい時は孤独のどん底に落ち込みます。
私達の心には下図のような『ストロークバンク』という目には見えないストロークをため込む『心の袋』があると考えられています。私達は色々な人間関係の中で過ごしていますが、そこで触れ合う人々から受けた 肯定的ストローク (+) や否定的ストローク (-) をため込んでいきます。(+)で満たされていれば幸福感の中にありますが、否定的ストローク(-)で満たされていると自己否定の孤独な不幸感の中にあります。 更に最下段の(+) も (-) もないストロークバンクが空の状態は、完全に自分の存在が否定され心が空っぽな状態で、(-)でも良いからストロークを得ようとして、外に向かえば凶悪犯罪に、内に向かえば自殺という悲惨な事態を巻き起こします。
2. 現代の若者、大学生の実情
私は退職後、大学1年生のキャリア教育を10年間担当しました。
大学入学直後に接する彼らは、互いにバリアを張り巡らしているように見え、無表情で本当に掴みどころがありません。通学の列車やバスで一緒になる学生達は、黙々とスマホとにらめっこしており、授業で行うグループワークも余程上手く導かないと話し合いが始まりません。90分間一言も話さない学生も少なくありません。 放っておけば互いに名前も知らず話もしないまま1年が過ぎるのではないかと本当に危惧します。
そこで私は、班編成変更を頻繁に行って、否応なく多人数と関わるようにして、授業開始の10分間を使って色々な交流ゲーム等を盛込み、各々が自分自身の強味・弱みと向き合い、相互開示し合い話合うように仕掛けています。
そうした中で明確になってくるのは 『現代の大学生は、本当は人恋しく孤独なのに、純粋で真面目で、少しの事に傷つきやすく、自分に自信がない為に目立たないよう自己防衛している』という事です。 何かのきっかけで、他者との交流やコミュニケーションの楽しさを体験すると、見違えるように明るく活動的になります。その変化や成長に接すると『大学講師をやっていて本当によかった!』と、しみじみ思います。そして改めて、若者の可能性の大きさを痛感し、それを引き出す触媒としての大人・先輩・大学教職員・(&キャリア講師)の役割の重要さを再認識します。
次に講義の冒頭で行っている簡単なアイスブレーク・ゲームから、大学生がどのような事を感じているのか、若者の優しく繊細で豊かな感性を紹介します。本ブログ読者の皆様が、身近な若者に接する時の参考にして頂ければ、とても嬉しく思います。
私達は、二人だけでなく、三人、四人・・と、色々なバージョンの人間関係の中で暮らしています。その一人一人は、考え方や価値観や行動が全く違う為、夫々が正しいと思う事ばかりを主張すると葛藤状態が生まれ、それを周囲が調整・救援しようとしても中々思うようには解決できません。そういう複数人数の言い争いの解決はとても難しい事を、良くある家庭内での親子の会話を通じて体験学習します。
これは職場の中では、上司・先輩・若手となりますが、『仕事の進行や結果』 がテーマとなりますので、やり取りは、もっと深刻で厳しいものになります。そういう準備運動・演習として『家庭内のやりとり』 は、とても分かり易く、沢山の気付きや学ぶべき点が出てきます。
しかし彼らが生まれ育った環境は、生活は豊かですが、塾や習い事に通い(通わされ)両親は忙しくて必要なストロークは中々もらえずに育ち、さらにストロークバンクが空虚な者同士で傷つけあい、その結果、ゲーム等のバーチャル世界に浸り、殻に閉じこもっていた方が安全だと思い込んでいるように思えます。
それでは、かくいう自分の50数年前はどうであったのか・・
正直、今の純粋で真面目な大学生を見ていると赤面する日常で、とても偉そうな事は言えません。私はベビーブーム最後の世代で、今の大学生よりも約3倍同世代がいるにもかかわらず、社会は高度成長期で求人が多く就職には困らない為、毎日部活や麻雀・パチンコ三昧、長髪に反戦デモ、合コンやダンスパーティにうつつをぬかす、凡そ大学生らしからぬ日々でした。
しかし貧しくても新取の気鋭に満ち溢れ、自由闊達に行動し、誰とでも何でもフランクに議論し、元気は有り余り、毎日が輝いていたように思います。それは『友との生身の親密なストロークのやり取り』が頻繁で豊かであったことを意味します。
そういう私達の大人の責務は、孤独で空虚な日々を送っている若者に、にこやかに挨拶し、声をかけ、仲良くなって話を聴いてあげることです。そうして若者たちが狭く固い殻から一歩踏み出し『無限の可能性が広がる実社会で自由闊達に羽ばたく勇気を持つ』ように背中を押してあげることです。
後期授業終了にあたり『講義全体を振り返って何でも感じたことを率直に書きなさい』 としてレポートを書いて貰います。これを読むと、授業の目的・狙いを的確に捉えて自分のものにしており、改めて『現代若者は繊細で傷つきやすいが、本当に心豊かで優秀だ!』 と感動します。『真面目で、素直で、繊細』 であり、大人・先輩・上司が密接に深くかかわる事の必要性を痛感します。一度心を開き交流のきっかけが出来ると、明るく活発になり大きく成長します。(赤)女子学生、(青)男子学生
(H) :自分自身への理解が深まった。 後期で2回の班変更があり、否応なく他者とのコミュニケーションをしなければならない状況に置かれたため、多少なりともコミュニケーション能力は上がったと感じた。
(W) :この授業を通して、班の人と協力して活動する事の大切さと楽しさを学びました。一人では大変な事でも他の人と協力することで、速く楽しく出来ることが分かりま した。これからも団結力を大切にしていきたい。
(Y) :この授業では、自分の将来を考え見つめ直す良い機会で、他の人の意見や考え等を聴ける場面が多く、自分が今後どうしていくべきなのかを深く考える切掛けを与えてくれています。一つ一つの授業で先生のメッセージも受取れて、毎回 『これからも頑張って行こう!』 という気になります。毎回コメント有難うございます。
(T) :元々コミュニケーションを取るのは苦手ではないが、人に優しく好印象を与えるような話し方をするのはとても大変だった。プレゼンは優勝できなかったものの、自分達で一つのプロジェクトを成功させた達成感は忘れられないです。一年間ありがとうございました。
(K) :キャリア開発の授業を通して、現在の自分、これから将来目指す自分 をきちんと見つめ考えることで、これからの生活で取るべき行動を明確にすることが出来たと思います。前期後期と一人一人を細かく見て下りありがとうございました。先生が担当で良かったです。
(O) :後期は体調不良と怪我が続き休みが多かったが、支えて下さった先生がとても偉大に思えました。私も大人になったら学生を支えて行けるような人になりたいと思いました。1年間ありがとうございました。
(T) :普通の授業では学ぶ事の出来ない、人との付き合い方を学んだり、人前で発表する経験が沢山出来ました。そのお蔭で色々な人と話すきっかけとなり、とても良かったです。 すごく楽しい授業でした。
(N) :キャリア開発は、ほとんどグループ活動で、グループで一人一人の役割を果たす重要性を学ぶ事が出来ました。グループで行うという事は、相手の事も考えてあげる事が重要であるのだと感じました。また先生は、ひとりひとりのことを、よく見ていると思いました。提出物には、必ずコメントをかいて返却されるので、コメントを見るのが楽しみでした。ありがとうございました。
(K) :最初は、この授業が自分の為にどのように役立つのか中々分かりませんでしたが、回を重ねる毎に考える力やプレゼン能力が向上したと実感しました。後期は特に班のメンバーで協力することが多く、協調性も学びました。もう先生の授業が受けられないと思うと淋しいです。
(Y) :社会に出てから役立つ様々な教訓を学べた。自分の心持や対人能力は一人で勉強するだけでは身につかないが、この授業を通じて多くの事を学びとれた。また先生から様々なアドバイスをいただき、常に高い意識を保つことができた。そのアドバイスを思い出し、今後も高い意識を持って大学生活を送りたい。
(T) :一年間前期後期ともに先生の講義を受けることができてよかったです。とても為になるし、心に残ったことが沢山ありました。先生が教えてくださったことを時折思い返しながらこれからも頑張っていこうと思います。
9. あなたの心はどんな形ですか?
エゴグラムのかたちは300通り以上ありますから必ずしも一致はしないと思いますが、形が似ていればその領域の基本姿勢に近いということになります。
(1) 『対人関係基本姿勢(4領域)のエゴグラム』は、次の通りになります。実際に自分で分析した『皆さんのエゴグラム』と照合してみてください。以前80名程の職場全員のエゴグラム分析を行なったところ次の結果でした。
④: 6名 ( 8%) ③: 5名 ( 6%)
②: 65名 ( 81%) ➀: 4名 ( 5%)
日本の企業平均は(④10%、③10%、②70%、①10%)と言われます。②が過半数以上ということは『中々自分の意見が通らず、自分の存在価値を実感することが少ない職場環境にある』ということですので、何とか④のエゴグラムになるように工夫・努力する必要があります。
次にもう少し細かくエゴグラムパターンを紹介します。
300以上あるエゴグラムの形ですが、皆さんのエゴグラムは 次のどれかに近いはずです。その横のコメントと照合してみてください。いままで2000人以上の社員研修と約1000人の大学生に分析し解説をつけて返却してきました。すると全員が「当たっている!どうしてわかるのですか?」と、異口同音に感想を述べます。今まで「全然違う!」という声を聴いたことがありません。(内心ニヤニヤしながら「君が自分で答えているのだから当たるのは当然だよ!」)
ぜひ5~10年に一回、自分のエゴグラム確認されるようお勧めします。
また難しい人間関係で悩んでいるときは、相手の立場になって50の質問票に答えてみてください。それはあなたにとっての相手の心の形であり、パターン図と照合して『なぜうまくいかないか。自分のどこで齟齬を来しているのか。Aで対応したらどうなるか』などを考えて、対応のスタンスを変えることをお勧めします。必ず建設的な関係づくりの参考になる筈です。