2024年3月3日日曜日

9. キャリア開発と元気度イメージ分析

   厳しい雇用状況や、新卒就職者の3割が3年以内に離職するなど、定着率の悪さなどが大きな問題になっています。 その背景には『学生は仕事・働く意味の理解が浅い。 業種・職種選択のミスマッチがある』 等があり、問題が大きいことから文部科学省は、20114月より大学・短大で 『キャリア教育を義務化』 しました。 しかしその前段階の高校生は5割以上が大学進学する時代となり『大学進学する事が目的化』しており、将来働く事への目的意識・進路意識が薄く、自主的な勉強時間が国際的に見てかなり少ない危機的状況です。 この為、文部科学省は『高校普通科でキャリア教育必修化』 に向け検討を始め、来年度からモデル校を数十校選定して開始します。 文部科学省の定義では 『キャリア教育とは、社会人として職に就く際に必要な能力や態度を育成するための教育』の事です。

1.ライフ・キャリア・レインボー
 『社会人として職に必要な能力や態度』は、就職後も絶えず努力し向上させていくことが求められます。 また会社の中だけでなく、一般社会人として家庭人としての成長も求められ、定年で会社生活を終えても生涯を終えるまで『社会人として必要な能力や態度』の維持向上は必要です。アメリカの心理学者 ドナルド・スーパーは、『職業的発達段階理論=キャリアは生涯を通じて発達する』に着目し下のイメージ図  『ライフ・キャリア・レインボー』 で分かり易く示しました。

 これによると人生は大きく 『8つのステージ(キャリア・パス) 』 で構成され、年齢に応じた『5つの発達段階』 に分けられます。 中でも 第2期 探索期(16~25歳)は、6つのキャリア・パスが新規スタートする大変な時期でまさに心理学で言う『疾風怒濤の時期』となります。 特に18歳で就職する高卒社員は、心の準備も不十分なままに職業人として早期成長を求められ、社会人としても厳しい自己変革が求められる為に大きな心の負担となり、ストレス症で悩む人や入社1~3年で退社する人の割合が高くなっています。 
人間は機械ではなく、心のひだが柔らかい繊細な生き物ですから、それぞれの発達段階にふさわしい適切な教育訓練、職場環境の整備、職場指導が必要です。
また一人一人が人生の目的意識をしっかりと持ち、現在の発達段階を適切に把握して、自分を見失わず、周囲に踊らされず、階段を一歩一歩登るような地道な努力を積重ねることが一番大切です。
若手を指導する先輩も、一生続く発達段階を意識して自らのキャリア開発を続け、後に続く若手後輩のキャリア開発に対して適切な指導・支援をしていく事が自分自身のキャリア・人生の充実に繋がります。

2.元気度イメージライン
 私達の心の状態は、目で見ることはできません。
また自分では、いつも元気だと思っても、人間関係や周囲の環境によって、知らず知らず活力を失い病気寸前になっている場合があります。そういう心の状態の変化を可視化できるのが『元気度イメージライン』です。私の会社の『30歳代・40歳代・50歳代の節目研修』では、強味‣弱みの分析と、それまでの元気度分析を行って振り返り、それからの10年20年をどう生きたいかを考えることを主軸にしていました。
その都度推進者の私自身も作成しましたが、下の50歳代元気度イメージラインを見ると、30年の会社生活では本当に色々なことがあり、元気度を100%失うようなことが沢山あったな・・と感慨深いです。

この経験をもとに、3つの大学で担当した大学1年生のキャリア教育でも、最初に元気度を作成してもらいました。そして驚いたことは、殆どのが学生が20年足らずの人生で、既に2~3回の深刻な落ち込みを経験していたことです。個別に落ち込みを確認すると、親子関係や学校でのいじめに起因するものです。
本来、自由に伸び伸びと学び、バイトし、仲間を作って、最期の学生生活を謳歌するはずの大学生が、目に力がなく、大人しく暗いイメージである原因がここにあると理解できました。





キャリアレインボーの第一段階(0~15歳)は、本来次の段階で活力の源泉となるはずの「家庭での親子関係、学校での教師・友人関係」です。この自我形成の重要な時期に、2~3回の深刻な落ち込みがあり「殻を閉ざすことが自分を守る唯一の手段だ」と思い込んでいる若い心は、何と痛ましく悲しいことでしょう! この心の殻をまず開放して、学友との交流がとても楽しいことだと体験させることが、私達のキャリア講師の一番の使命でした。
みなさんの周りに元気のない若者がいたら、是非下の「元気度イメージライン」を書いてもらって、それを元に悩みの源泉を聴いてあげ『打開方法や現在・未来を明るく前向きに生きる手立て』などを一緒に考えてあげるようにお願いします。それが日本の若者を元気にする第一段階だと痛感します。
また是非、ご自身の元気度イメージも描いてみてください。きっと新たな気づきがあり、これからの新たな課題が見つかると思います。







9.新たな自己への旅立ち (元気度)

私達は多種多様な人間関係の中で生活しており、他者との交流を避けて生きることは出来ません。 特に大人になって仕事に就くと、上司・先輩・同僚・部下・お客様等々色々な人達との密接な関わりが必要となり、円滑な人間関係なしには一歩も前に進むことは出来ません。 その一人一人は、生まれも育ちも考え方も全て自分とは異なる人達ですから、中々上手くいかず、時には激しい葛藤に悩み苦しむことも少なくありません。

そういった苦しく厳しい局面から逃げず、相互理解を深めつつ前向きな一歩を踏み出して、共に建設的で共感できる人間関係を築いていけないものでしょうか? 

これは、あらゆる人が直面し悩む切実な願いです。

かくいう私も自分の職業人生を振返ると、上司や部下との葛藤の40年間だったな・・と痛感します。その色々な苦しい場面で出会った素晴らしい恩師・上司・先輩・友人・知人方から教えられた事や数々の教訓等により、苦しい悩みや難しい局面を乗り越える事が出来ました。 

これから社会に出る若者や、既に社会人となり色々な人間関係の中で悩み苦しんでいる人にとって『何からか解決・打開の手掛かり、身を守る武器になるものはないか・・』という思いから『新たな自己への旅立ち』をテーマとしました。 

本ブログを通じて 『交流分析(TA)』 に接して戴き、このTAは私達が遭遇する色々な『人間関係の齟齬・葛藤・悩み・苦しみ』 等を軽減し脱却・解決して新たな建設的人間関係を構築し、しがらみから開放され成長する強力な道標・武器となる筈です。 そして 『心の相談相手・友人、助言者』 として活用いただき、皆様方の更なる活躍・飛躍の一助として頂ければ、幸甚この上ありません。

なお本題名は、40年以上にわたり国内交流分析(TA)の第一人者だった 尊敬してやまない 故 岡野嘉弘先生(元社会産業教育研究所長)の名著 “新たな自己へのたびだち”によります。この本は残念ながら絶版となりましたが『是非入手して勉強したい』 という方がおられましたら、10数冊保管しておりますので、下記にメール戴ければお分け致します。⇒  hidechiyo915a@gmail.com

1.最上の人生を作る三つの力

私達の成長、輝かしい将来は、三つの力 【(1) 過去の重力、(2) 現在の推進力、(3) 未来の引力)】によってつくられます。

若し自分の過去が未来を作る (過去“を原因とする結果としての現在 の延長線上にしか未来はない) のだったら、あるいはそう思い込んでいたら、私達の未来は既に決まっており希望は持てません

しかし実際はそんなことはなく、世の中は既定路線で片付くものは殆どなく、良くも悪くも想定外のことだらけです。 従って、 もし未来に自分が描く良い結果(夢)を起こしたいと思ったら、その良い原因となる行動を今起こせば確実に実現できるのです。 これを『未来の引力』 と言います。


    過去 ・・・現在 ・・・・未来 
            原 因    結   果
                          良い原因    ⇒     良い結果

 しかし、『今まで生きてきた自分の延長線』 でしか将来・未来を見ない人が多いのは何故でしょう? それは、今迄生きてきた過去の出来事や経験は重い実感が伴っており、しかも過去は変えられないのに対して、未来の姿や夢は 実感がなく何とも頼りないからです。 従って殆どの人は、無意識的に自分の未来に対して『過去の経験に基づく金縛り』をかけて生きています。 これを交流分析では『今までの自分が無意識に形成した“人生脚本”』 と言います。 

(1). 過去の重力・・意識しないうちに形成される自分の“人生脚本”

  ① 心の三重構造(気質・性格・人格)

私達の心は、生誕から発達し、その形成段階は三つに分けられます。これを心の三重構造(=感情・思考・行動傾向) と言います。私達は普段、この三重構造の心に支配された心の動きを意識せずに、色々な感情を抱き、考え判断決断し行動しています。従って輝かしい未来を実現するためには、『客観的な眼で、自分の心の三重構造をしっかりと分析し把握する事』 が重要になります。

気質・・持って生まれた心の特性 一生変わらない)

性格・・12歳頃まで両親・兄弟等の影響で形成される心の特性

人格・・12歳以降、周囲の人間関係・環境の中で体験学習し身に纏う

    対処法・処世術別名『仮面(ペルソナ)』ともいわれる。















②元気度イメージライン分析(点から線への展開)

   私達は普段、『生まれた時から形成された自分の心の三重構造(人生脚本)を把握する事の重要性』 に気付かずに生活していますが、本当は『自分の心の働きの癖』 をしっかりと把握できていれば、人間関係で悩むことも少なくなり、より友好的でポジティブな人生を手に入れることができます。

その有効な分析手段が『元気度イメージライン分析』です。私達は、その時々の出来事や問題点・壁などに直面して悩み苦しんで 『どん底だ!』と嘆いたり落込んだりします。またうまく行った時は喜び『最高!』 とはしゃいだりします。そういった大きな出来事の時の気分を繋合わせたものが、『元気度イメージライン』です。そしてその出来事の時、『何故そうなったか、何が教訓となったか』 を突き詰めて考え、自分成長の大事な財産(過去の重力)とする人は、大きく飛躍する事ができます。参考までに、私が40歳台の時(今から約25年前)に作成した元気度イメージライン図(その後5057歳時見直し) を添付しますので、皆さんが作成する時のサンプルにしてください。

私達の性格や人格の形成に大きく影響するのは、0~12歳までで、特に0~3歳までが重要と言われていますが、この時期の事は殆どの人が記憶していませんので、ご両親や兄・姉さんなどにしっかりと聴いて作成すると良いと思います。

 ご自分の「元気度イメージライン」を作成する時は、次のシートを使用してください。変化の激しい時代ですので、将来の事は10~20年先までに留めておいた方が良いと思います。

 

(2). 現在の推進力・・私の心の形 (エゴグラム : 自我分析)

 ギリシャの哲人ソクラテスは『汝自身を知れ』と言っています。しかし生まれてきた  時から現在までの『“過去の重力” によって形成されてきた 本当の自分自身の心』を知る事』は困難なことですが、とても大事な事です。何故なら、輝かしい将来を築く為には、『過去のしがらみや金縛りから解き放たれた自由な心の自分』 が、冷静な判断力で確実な行動をスタートさせる必要不可欠だからです。これが 『現在の推進力』です。

交流分析では『過去と相手は変えられない。変えられるのは今ここにいる自分だけ(Here & Now)』といって、今現在を最も重視しています。その現在の『ありのままの私の心の形、弱み・強味』を可視化して把握できるのが『エゴグラム』 です。

詳細は、以前紹介した下の3項を熟読し、是非ご自身の現在のエゴグラム分析を実施してみて下さい。また1~3年ごとにエゴグラム分析を行い、その成長変化を確認するのも大事です。(興味のある方は、下のURLをクリックしてください)

6. あなたの心はどんな形ですか?

1. より良い人間関係作りの為に



(3). 未来の引力・・『将来ビジョンへのロードマップ』

『最上のものは過去にあるのではなく将来にある。過去に囚われたり、過去を懐かしむだけに終わらず、将来の夢を求めて努力しなさい』

実に含蓄のある名言です。その将来の夢、未来の姿を『単なる憧れや夢物語に終わらせない』 為には、その未来を『自分の将来ビジョン』 として、短期・中期・長期の計画(ロードマップ) を立てて、常に意識して行動していく事が重要です。

大學でのキャリア設計は、以上の3つの力(過去の重力、現在の推進力、未来の引力)を、しっかりと捉え、確実な努力の一歩を踏み出すことを目的にしています。

若い皆様も、ベテランの方、第二の人生を歩んでおられる方も、是非一度この3ステップでご自身の心を見つめ直し、もう一度人生設計を構築してみることをお勧めします

9. 繊細で孤独な若者の心の充足を

1.『人の心は ふれあい(ストローク)で形作られる』

 人間の肉体は、栄養や睡眠や清潔が必要で、それなしには健康に生きていくことが出来ません。同様に『人間の心の健康にも栄養=人とのふれあいで得られる刺激が必要』で、これがないと、人間は心のバランスを失い、心の健康を保てなくなってしまいます。

 この人との接触から得られる刺激を『ストローク』と呼びます。その意味は『なでる、さする、愛撫する』という意味ですが、交流分析では『ある人の存在を認めるための行動や働きかけ』と定義しています。



 私達は生まれた時から、抱かれたり、あやされたり、愛撫されたりしてストロークを受けながら育ってきました。それらが私達の神経系統の適切な刺激となって、健全な心身の発達を促進してきたのです。心理学者エリック・バーンは『幼児期に十分なストロークが与えられないと、その子の脊髄は委縮し、肉体的にも、情緒・精神的にも成長が遅れる』ことをつき止めました。

【故 岡野嘉宏著「新しい自己への出発(廃版)」P61に実例として「スーザンという女の子」の記録映画の話が出ていますので別途紹介します。】

 子供は成長につれて言葉を覚え、言葉で生活できるようになります。そうすると今までの『肌の触れ合い』から、ほめられたり頷かれたりして、自分の存在や価値を認めてもらう『心のふれあい』を求めるように変わっていきます。このような言葉や無言の動作によって与えられるストロークの事を『心理的ストローク』と言います。

ただ心理的ストロークを求めるようになっても、それだけで満足するものではなく、子供から大人になっても肉体的ストロークは必要なものです。

私達のストロークには「肯定的ストローク」「否定的ストローク」があります。それを整理すると次の表になります。左の緑の状態の時私達は存在を肯定され、豊かで幸福感に満たされます。反対に黄色やピンクの状態の時は、存在を否定され悲しくなり、ひどい時は孤独のどん底に落ち込みます。



私達の心には下図のような『ストロークバンク』という目には見えないストロークをため込む『心の袋』があると考えられています。私達は色々な人間関係の中で過ごしていますが、そこで触れ合う人々から受けた 肯定的ストローク (+) や否定的ストローク (-) をため込んでいきます。(+)で満たされていれば幸福感の中にありますが、否定的ストローク(-)で満たされていると自己否定の孤独な不幸感の中にあります。 更に最下段の(+) (-) もないストロークバンクが空の状態は、完全に自分の存在が否定され心が空っぽな状態で、(-)でも良いからストロークを得ようとして、外に向かえば凶悪犯罪に、内に向かえば自殺という悲惨な事態を巻き起こします。



2. 現代の若者、大学生の実情

私は退職後、大学1年生のキャリア教育を10年間担当しました。

大学入学直後に接する彼らは、互いにバリアを張り巡らしているように見え、無表情で本当に掴みどころがありません。通学の列車やバスで一緒になる学生達は、黙々とスマホとにらめっこしており、授業で行うグループワークも余程上手く導かないと話し合いが始まりません。90分間一言も話さない学生も少なくありません。 放っておけば互いに名前も知らず話もしないまま1年が過ぎるのではないかと本当に危惧します。 

そこで私は、班編成変更を頻繁に行って、否応なく多人数と関わるようにして、授業開始の10分間を使って色々な交流ゲーム等を盛込み、各々が自分自身の強味・弱みと向き合い、相互開示し合い話合うように仕掛けています。

そうした中で明確になってくるのは 『現代の大学生は、本当は人恋しく孤独なのに、純粋で真面目で、少しの事に傷つきやすく、自分に自信がない為に目立たないよう自己防衛している』という事です。 何かのきっかけで、他者との交流やコミュニケーションの楽しさを体験すると、見違えるように明るく活動的になります。その変化や成長に接すると『大学講師をやっていて本当によかった!』と、しみじみ思います。そして改めて、若者の可能性の大きさを痛感し、それを引き出す触媒としての大人・先輩・大学教職員・(&キャリア講師)の役割の重要さを再認識します。 

 次に講義の冒頭で行っている簡単なアイスブレーク・ゲームから、大学生がどのような事を感じているのか、若者の優しく繊細で豊かな感性を紹介します。本ブログ読者の皆様が、身近な若者に接する時の参考にして頂ければ、とても嬉しく思います。

 3.  ストローク体験 (無視と傾聴)
私達は色々な人間関係の中で過ごしています。お互いの信頼関係や協力的な人間関係が築けていない場合、家庭や学校・会社・地域社会でうまくいかないばかりでなく、人間関係で悩み、そのストレスで健康を害し、不登校や休職・退職に追い込まれることもあります。 
最近、入社3年以内に退職する若者が30%を超え続け大きな社会問題になっています。その大半は、若者のコミュニケーション力不足による職場人間関係不信や不和が原因です。そういう背景から、企業が採用選考時に最重視する点は『コミュニケーション能力』が15年連続ダントツの第1位です。2位:主体性、3位:チャレンジ精神、4位:協調性、5位:誠実性、6位:責任感・・と続きます。(日本経団連『新卒者採用に関するアンケート調査』より)
何故 現代の若者は コミュニケーションが下手で苦手なのか・・?
それは、少子化で親の過干渉、兄弟にも揉まれる事少なく、ゲーム機やスマホの一人遊びで友達と集団で遊ぶことがなくなり、人間関係づくりが身につかず苦手となっている事が指摘されています。 これは凶悪犯罪の低年齢化の原因とも一致します。

そういう背景の元、大学のキャリア教育では『コミュニケーション能力の向上』を重要テーマとしており、その基礎能力として『積極的傾聴』 (ストローク体験:無視と傾聴の大切さを体験学習します。

下記は、この『無視1分間、傾聴1分間』 のロールプレイを体験学習した直後の学生の感想です。これらから、今の若者は心の交流経験が少ないだけで、実はとても鋭敏で傷つきやすい優しい心を持っていることが分かります。ただ『無表情や無反応や無言が、相手にどんな悪い印象を与えているかを知らないだけ』なのです。

 ①  ストローク体験を通じて、自分が話している時に無視されるのがどれだけ辛いかを、また傾聴することでお互いが楽しく話が出来ることを実感した。これから会話する時は、スマホをいじったり違う事を考えたりせずに、良く傾聴し相槌を打ち会話したい。
 ②  自分は今迄、相手にストロークを送る事も送られることも余りなかったように思う。これからは自分から積極的に送るように心がけようと思った。
 ③  無視されると、相手にちゃんと話が伝わっているか分からず、次に何を離したら良いか分からず雰囲気も悪かった。傾聴して貰えると話すのが楽しく嬉しかった。
 ④  無視されていると、どんどん自分の発言に自信がなくなっていった。『睨む、脅す』以外に、『無関心・無視』が如何に相手を傷つけるか身を持って実感し印象的だった。
 ⑤  1回目の何を言っても反応が返ってこない時は話し難く不安になりました。二回目は頷いたり目が合って対話をしているなと感じ気持ち良かった。今後参考にしたい。
 ⑥  人の話を無視するのは難しく、無視されたまま話し続けるのはとても大変な事でした。
 ⑦  相手の話に頷かず反応しないのは辛く寂しいものがあった。相手の話を聴くときはちゃんと相手の目を見て聴きたい。その方がお互いに気持ちの良いものだと思った。
 ⑧  人の話を意図的に無視するのは、とても罪悪感があり、また自分が無視されるのもとても嫌でした。人の話を傾聴するのは、とても大切だと思いました。

そして『肯定的ストローク、否定的ストローク、ディスカウント』の表で、日頃の自分の行動傾向を振返ります。さらに相互の心のストロークバンクが、肯定的ストロークで満たされる人間関係の大事さを学びます。
酒鬼薔薇事件等の若年凶悪犯罪者は、幼い時からノンストローク(プラスもマイナスもなく空っぽ)で育ち『マイナスでもよいから注目を集めたい』という心の飢餓状態が引き起こす事が多いのです。



 
 4.日常よくある3人のゲーム (被害者・攻撃者・救援者)

 私達は、二人だけでなく、三人、四人・・と、色々なバージョンの人間関係の中で暮らしています。その一人一人は、考え方や価値観や行動が全く違う為、夫々が正しいと思う事ばかりを主張すると葛藤状態が生まれ、それを周囲が調整・救援しようとしても中々思うようには解決できません。そういう複数人数の言い争いの解決はとても難しい事を、良くある家庭内での親子の会話を通じて体験学習します。 

これは職場の中では、上司・先輩・若手となりますが、『仕事の進行や結果』 がテーマとなりますので、やり取りは、もっと深刻で厳しいものになります。そういう準備運動・演習として『家庭内のやりとり』 は、とても分かり易く、沢山の気付きや学ぶべき点が出てきます。

 
学生に『この家庭の3人が、3分間でお互いが納得するように真剣に話し合ってください』とスタートすると、教室は大変賑やかになってアッという間に3分間が過ぎますが、殆どのグループが解決できず、お互いにヒートアップしてきます。
そこで一旦視点を変えて『目的・目標・手段』 の違いを勉強します。


そして『今度は、この家庭がいつも大事にしている“目的・目標・手段” を意識して話し合いなさい』と、第2回目の話し合いを行うと、今度は殆どのグループが3分以内に話し合いが終わり、みんな満足そうなハッピーな笑顔になっています。(講師としても満ち足りた気分になる至福の時です。)
下記は、『3人のゲーム』 のロールプレイを体験学習した学生の感想です。若者らしい柔軟で豊かな感性に満ちたレポートです。
 ①  今日は、小学生を演じたやりとりが印象に残った。親子だけでなく上司部下でも、前向きに目的や目標を決めながら指導する方が、双方にとって良いのだな・・・と感じた。
 ② 私は救援役の父親をやったが、言い争っている二人をフォローするのは、とても大変だと感じた。
 ③  3人のやりとり演技は面白かった。 救援役の父親を演じたが、こうやって人との間を取り持てば良いのかと気付かされた。目的と目標を明確にしてからの演技も見ていて面白かった。
 ④  母親が子供を怒る時「子供がどうしたらよいか」という事を自分で考えられるような怒り方がベストだと思った。また何かを成し遂げたい時は、目的・目標・手段を明確にしたいと思う。
 ⑤  本日の実習で、お母さんの言い方ひとつで子供はやる気を出したり余計にやる気をなくしたりするので気を付けなければいけないと思った。またエゴグラム分析は春よりも全部平均点に寄っており、普段も気持ちに余裕を持って生活でき少し成長できたたなと思った。

   二つのゲームを通じて感じるのは、現代の若者の感性の瑞々しさです。

しかし彼らが生まれ育った環境は、生活は豊かですが、塾や習い事に通い(通わされ)両親は忙しくて必要なストロークは中々もらえずに育ち、さらにストロークバンクが空虚な者同士で傷つけあい、その結果、ゲーム等のバーチャル世界に浸り、殻に閉じこもっていた方が安全だと思い込んでいるように思えます。

 

それでは、かくいう自分の50数年前はどうであったのか・・

正直、今の純粋で真面目な大学生を見ていると赤面する日常で、とても偉そうな事は言えません。私はベビーブーム最後の世代で、今の大学生よりも約3倍同世代がいるにもかかわらず、社会は高度成長期で求人が多く就職には困らない為、毎日部活や麻雀・パチンコ三昧、長髪に反戦デモ、合コンやダンスパーティにうつつをぬかす、凡そ大学生らしからぬ日々でした。

しかし貧しくても新取の気鋭に満ち溢れ、自由闊達に行動し、誰とでも何でもフランクに議論し、元気は有り余り、毎日が輝いていたように思います。それは『友との生身の親密なストロークのやり取り』が頻繁で豊かであったことを意味します。


そういう私達の大人の責務は、孤独で空虚な日々を送っている若者に、にこやかに挨拶し、声をかけ、仲良くなって話を聴いてあげることです。そうして若者たちが狭く固い殻から一歩踏み出し『無限の可能性が広がる実社会で自由闊達に羽ばたく勇気を持つ』ように背中を押してあげることです。



5.エピローグ (キャリア教育修了時の学生感想)

  後期授業終了にあたり『講義全体を振り返って何でも感じたことを率直に書きなさい』 としてレポートを書いて貰います。これを読むと、授業の目的・狙いを的確に捉えて自分のものにしており、改めて『現代若者は繊細で傷つきやすいが、本当に心豊かで優秀だ! と感動します。『真面目で、素直で、繊細』 であり、大人・先輩・上司が密接に深くかかわる事の必要性を痛感します。一度心を開き交流のきっかけが出来ると、明るく活発になり大きく成長します。(赤)女子学生、(青)男子学生

  (Y)  私はずっと人前に出る事や、仕切って進めることが苦手だったが、社会に出たらやらなければいけない時もあるという事を教えてくれた授業でした。先生だったから頑張れたし成長できたと思います。1年間ありがとうございました。
(H) :自分自身への理解が深まった。 後期で2回の班変更があり、否応なく他者とのコミュニケーションをしなければならない状況に置かれたため、多少なりともコミュニケーション能力は上がったと感じた。
(W) :この授業を通して、班の人と協力して活動する事の大切さと楽しさを学びました。一人では大変な事でも他の人と協力することで、速く楽しく出来ることが分かりま した。これからも団結力を大切にしていきたい。
(Y)  :この授業では、自分の将来を考え見つめ直す良い機会で、他の人の意見や考え等を聴ける場面が多く、自分が今後どうしていくべきなのかを深く考える切掛けを与えてくれています。一つ一つの授業で先生のメッセージも受取れて、毎回 『これからも頑張って行こう!』 という気になります。毎回コメント有難うございます。
(T) :元々コミュニケーションを取るのは苦手ではないが、人に優しく好印象を与えるような話し方をするのはとても大変だった。プレゼンは優勝できなかったものの、自分達で一つのプロジェクトを成功させた達成感は忘れられないです。一年間ありがとうございました。
(K) :キャリア開発の授業を通して、現在の自分、これから将来目指す自分 をきちんと見つめ考えることで、これからの生活で取るべき行動を明確にすることが出来たと思います。前期後期と一人一人を細かく見て下りありがとうございました。先生が担当で良かったです。
(O) :後期は体調不良と怪我が続き休みが多かったが、支えて下さった先生がとても偉大に思えました。私も大人になったら学生を支えて行けるような人になりたいと思いました。1年間ありがとうございました。
(T)   :普通の授業では学ぶ事の出来ない、人との付き合い方を学んだり、人前で発表する経験が沢山出来ました。そのお蔭で色々な人と話すきっかけとなり、とても良かったです。 すごく楽しい授業でした。
(N) :キャリア開発は、ほとんどグループ活動で、グループで一人一人の役割を果たす重要性を学ぶ事が出来ました。グループで行うという事は、相手の事も考えてあげる事が重要であるのだと感じました。また先生は、ひとりひとりのことを、よく見ていると思いました。提出物には、必ずコメントをかいて返却されるので、コメントを見るのが楽しみでした。ありがとうございました。
(K) :最初は、この授業が自分の為にどのように役立つのか中々分かりませんでしたが、回を重ねる毎に考える力やプレゼン能力が向上したと実感しました。後期は特に班のメンバーで協力することが多く、協調性も学びました。もう先生の授業が受けられないと思うと淋しいです。
(Y) :社会に出てから役立つ様々な教訓を学べた。自分の心持や対人能力は一人で勉強するだけでは身につかないが、この授業を通じて多くの事を学びとれた。また先生から様々なアドバイスをいただき、常に高い意識を保つことができた。そのアドバイスを思い出し、今後も高い意識を持って大学生活を送りたい。
(T) :一年間前期後期ともに先生の講義を受けることができてよかったです。とても為になるし、心に残ったことが沢山ありました。先生が教えてくださったことを時折思い返しながらこれからも頑張っていこうと思います。

9. あなたの心はどんな形ですか?

1.あなたの心はどんな形をしていますか?
  心理学者エリック・バーンは、見えない心を『エゴグラム』 で見える形にしました。 私達は、楽しい時や悲しい時辛い時等、その時々の心の状態が大きく変化しますが、表面上は平静を保って日常生活を送っています。 自分や相手の心の状態や対人関係上の癖・傾向をよく理解していないと色々な齟齬や行違いが発生し、人間関係のトラブルや部下・後輩のモチベーション低下等に繋がります。 そこで今回は実際に自分で心の形(エゴグラム)を分析してみましょう。

 次のエゴグラムの為の質問票、50の問いにありのまま正直に答えてください。なるべく考え込まず悩まないで、はい(○)2点、いいえ(×)0点で答えてください。 どちらでもない(△)1点が多いと分析結果は信頼性が失われます。51%以上「はい」なら(○)、49%以下だったら(×)という具合に、10分以内で回答してください。
 文字が小さいので、一度印刷した方が回答しやすいと思います。
 全部回答が終わりましたら、右の欄に合計点を記入してください。

 
CPNPAFCACの合計点が出ましたら、次の『私の強みと弱み(エゴグラム分析表)』左側のグラフ表のCPNPAFCAC軸上にプロットしてください。その5点を線で結んでできた折れ線グラフが、『あなたの現在の心の形(エゴグラム)』 です。

  なお誤解のないようにして頂きたいのは、このエゴグラムは、『良い・悪い』 ではなく、あなたが対人関係で示すあなたの心の働きの傾向を示しているという事です。CP(批判の親)、NP(保護の親)、A(大人の理性)、FC(自由な子供)、AC(従順な子供)を表しますが、詳細は下の 『より良い人間関係つくりの為に』 を参照してください。

 このエゴグラム分析表で真中の水色のゾーンは、5つの自我状態の 『プラス面』 がでる領域です。上方オレンジ・ゾーンは『強すぎるマイナス面』、下の方のオレンジ・ゾーンは『低すぎるマイナス面』 が出るので要注意です。
 プロットしたそれぞれの点(自我状態)の解説が右側の解説表に記載していますので該当欄を確認して下さい。 如何ですか? 自分が日頃思っている自画像と合致していませんか?『高すぎる場合』は最上段のアドバイスを、『低すぎる場合』 は最下段のアドバイスを実践して、1年後2年後、もう一度分析してみて下さい。 かならず変化が現れる筈です。
 また更に、家族や、友人や、職場で分析してお互いに結果を開示して共有化し合うと、より深いコミュニケーションの輪が広がっていきます。

1.典型的エゴグラムパターンから知る対人傾向

 エゴグラムのかたちは300通り以上ありますから必ずしも一致はしないと思いますが、形が似ていればその領域の基本姿勢に近いということになります。

(1)  『対人関係基本姿勢(4領域)のエゴグラム』は、次の通りになります。実際に自分で分析した『皆さんのエゴグラム』と照合してみてください。以前80名程の職場全員のエゴグラム分析を行なったところ次の結果でした。

:  6名 (  8%)  :  5名 (  6%)

: 65名 ( 81%)  :  4名  (  5%)

 日本の企業平均は(10%、10%、70%、10%)と言われます。が過半数以上ということは中々自分の意見が通らず、自分の存在価値を実感することが少ない職場環境にある』ということですので、何とかのエゴグラムになるように工夫・努力する必要があります。

 次にもう少し細かくエゴグラムパターンを紹介します。

 300以上あるエゴグラムの形ですが、皆さんのエゴグラムは 次のどれかに近いはずです。その横のコメントと照合してみてください。いままで2000人以上の社員研修と約1000人の大学生に分析し解説をつけて返却してきました。すると全員が「当たっている!どうしてわかるのですか?」と、異口同音に感想を述べます。今まで「全然違う!」という声を聴いたことがありません。(内心ニヤニヤしながら「君が自分で答えているのだから当たるのは当然だよ!」)

 ぜひ510年に一回、自分のエゴグラム確認されるようお勧めします。

 また難しい人間関係で悩んでいるときは、相手の立場になって50の質問票に答えてみてください。それはあなたにとっての相手の心の形であり、パターン図と照合して『なぜうまくいかないか。自分のどこで齟齬を来しているのか。Aで対応したらどうなるか』などを考えて、対応のスタンスを変えることをお勧めします。必ず建設的な関係づくりの参考になる筈です。