2024年4月3日水曜日

3. 原発事故に学ぶ真のリーダーシップ

         改定:2017年7月19日
 最近のマスコミや野党の度を過ぎた 『森友・加計学園問題の過熱ぶり、安倍政権批判報道、支持率低下』 を見ていると、本当に深刻な不安を覚えます。 
 『わが国民は、日本がどういう国であってほしいのか?』
 『一体どんな許せない汚職・疑獄があったのか?』
 『 民主党政権時代の政治不信を一掃し、株価7000円台に落ち込んだ株価を2倍以上の2万円前後に回復させ、失業率を劇的に改善したのは誰か?』
 『 あの自国中心主義のトランプやプーチンに一目置かれ国際的にこれほどの存在感で信頼されたリーダーがいただろうか?』
 『このリーダーの何が許せないのか? 他の誰にどんなリーダーシップを期待し求めているのか?』


 こういう疑問を考えるうえで、是非思い返してほしい事があります。
 3年前の本欄で報告しましたが、福島原発事故で、『日本の現場リーダーは強いが、トップリーダーはだめだ』 という評価が海外で定着したと言います。 
 当時の原子力安全委員会  斑目委員長が、首相官邸内の無統制・無責任・混乱ぶりをマンガで分かり易く、克明に描いています。 日本人全員が一度は確認してほしい当時の恐ろしい実態です。
      ⇒(斑目マンガ) こちら
しかし斑目元委員長は、当時 日本の原子力最高技術者だった訳であり、 まるで小学生のような言い訳じみた幼稚なマンガの陰口でなく、『日本の原子力技術者トップとして、何故官邸で自分の見解・意見を命をかけてでも徹底して主張・主導しなかったのか』 と情けなくなります。 これに反し、当時福島原発の現場は、まさに命がけで壊滅的危機に対処していました。
斑目氏は【東大大学院東芝3年勤務東大講師・教授安全委員会】 という輝かしいキャリアです。 菅直人元首相=東工大、鳩山元首相=東大 と学歴だけは立派ですが、とても一国を率いるトップリーダではありませんでした。

 前川前文科省次官の言動は、この斑目氏と全く同じで悪しき官僚体質丸出しです。 特に現役官僚時代『面従腹背が官僚としての座右の銘だ』 と臆面もなく吐露する姿を見ていると、『これが日本の教育行政の元トップか!日本の教育環境は大丈夫か!』 と暗澹たる気持になります。 

 現在ほとんどの国会議員が東大出身ですが、国会で議論されるのは 『森友・加計学園問題』 などの枝葉末節の問題だけで、天下国家や周辺国からの脅威に対する備えや国民を守る議論は全くなされず、『日本の最高学府ではちゃんとしたトップリーダーや、トップマネージメントは育たない。 決定的に何かが欠落している』 としか思えません。 是非他国(ハーバード、オックスフォード大等) のリーダーシップ教育を調査・研究して、充実を図ると共に、我々国民もマスコミや野党に踊らされず、真実を見抜く目を養う事が急務だと思います。

                              2014年3月11日
2013年度大宅壮一賞『カウントダウン・メルトダウン』 の中で著者の船橋洋一氏は、  『日米の危機対応、組織構造、リーダーシップのあり方などは、戦前と全く変わっていない』 と結論づけています。 「永遠のゼロ」 に描かれた戦時の理不尽な軍上層部と同じような幹部・上司は、現代の私達の周囲にも沢山存在します。 そういう事を自覚し乗越え改革していく事が、私達日本人の差し迫った最重要課題だと言えます。

1.  最悪シナリオを真先に考えるアメリカ、 『最悪シナリオをない事にする日本』
アメリカは、2001911日同時多発テロの後、原発テロの予防と万一起きた時の被害拡大防止に本気で取り組み、その結果導きだされた減災措置を日本側は一貫して『想定外』として排除してきた。 アメリカは福島原発対応にも全て提供し支援すると申出たが日本政府は断わりました。
日本の思考回路・心的傾向は、戦争中も戦後も全く同じと言えます。
▲『今起きたら困ることは、起きないのではないかと思う。』 ⇒起きないに決まっている⇒いや絶対起きない  ⇒起きると考える者はけしからん!
▲最悪のシナリオはハナから消してしまいたがる、絶対起きない事を信念にしてしまう。
▲原発事故は起こってはならないから、起きた時のことを考えるなどもってのほかだ。
▲不都合な事が起こっては困るという組織利害感情に支配される。
   (例)2010浜岡原発訓練で電源喪失訓練の提案に対し 
     ⇒住民が不安になるので訓練はしない

2.  危機における組織論。 『原発特攻隊』 に絶句したアメリカ
  米国サイト支援部チャールズ・カストナー部長が原発事故直後吉田所長に行った最初の質問は『作業員達はちゃんと寝ていますか?』でした。 彼らは長期戦を念頭に置いて危機対応を考えます。 カストナーは、吉田所長の回答とその理屈を聴いて唖然として絶句しました。 『現場指揮官に戦闘プランはあるが、司令部に戦略プランはない! 日本は、最後は玉砕するつもりか!』
  吉田所長は 『アメリカ人はこんな事を心配するのか』 と驚きました。(恐らく殆どの日本人も同様に考える)『今を必死にやる。明日も必死にやる。寝ている場合ではない! 被災者達は寒い中食うや食わず、避難所で雑魚寝生活を強いられている。それを思う時我々現場の者が、働く環境を良くする=待遇を良くする事はできない。』と述べる吉田所長にカストナーは一番衝撃を受けたそうです。

3.  危機に対する日米のアプローチの違い、『日米同盟の危機』
    原発危機の過程でアメリカ政府は 『日本政府一丸で対応して欲しい』 と再三日本に求めました。 それは日本政府が持てる国家資源を統合できていないのではないかと疑念を持ったからです。特に315日に対策統合本部が立ち上がるまでの4日間、アメリカは 『これだけの危機の時に日本政府は何故もっと胸襟を開いてくれないのか』 と非常に強い不信感を抱いていました
    一方、日本はアメリカとの協調プランを進んで作ろうとはしませんでした。
   こういう中で、いざ放射能被害が米兵やアメリカ国民に及ぶ事態になったら、アメリカ政府は自国民の保護に向かうことになります。 実際アメリカは、密かに撤退計画策定。 ゼロリスクを主張する海軍と日米同盟への影響を懸念する国務省で紛糾し、大統領科学技術担当補佐官ジョン・ホルドレンに委ねられました。  のちにあるホワイトハウス高官は、「もしあの時、原発事故の危機から逃れる為に、在日米軍が日本から撤退したら、日米同盟は終わっていた。」 と述べています。 実際は撤退どころか 『トモダチ作戦』 を展開したのは記憶に新しいところです。

4.  国の危機対応ができる真のリーダー、総大将不在の日本
    アメリカは、日本の覚悟、本気度、取組み方の拙さをすべて観察し、『極めて危うい。日本では誰がリーダーシップを取っているかわからない』 と受け止め、314日 ルース駐日大使は 『アメリカの専門家を首相官邸に常駐させて欲しい』 と求めました。
    これに枝野官房長官は猛反発し互いに電話で怒鳴り合い、日米同盟の脆さが露呈した場面でした。この時、1号機水素爆発に続き、2号機も爆発するかもしれない、東電も撤退するかもしれないという極限の危機状態で、菅首相の暴走盲走ぶり、“国の焦点に位置する総大将不在で右往左往する官邸の状況” は 『カウントダウン・メルトダウン』 第4章に克明に描かれています。
   ▲怒鳴りまくり致命的に間違った判断をする。
▲何か起こると 「なぜ起きたんだ、誰の責任だ」 から始まるので、誰も怖がって情報を上げない
▲人を信用せず、『情報収集・分析・判断・いい結果を生み出す』 を全部自分一人でやろうとする。 国としても、『危機時の本物の参謀、信頼のおける本物の技術的相談・支援体制』 がありませんでした。

【⇒このことは、当時の原子力安全委員会の斑目委員長が、首相官邸内の無統制・無責任・混乱ぶりをマンガで分かり易く、克明に描いています。 是非ネットで次項を確認して下さい。 ⇒ こちら 班目春樹のページ 】

5.  第二の敗戦 = 『技術、物量、ロジスティック、インテリジェンスに弱い日本』
    アメリカの底力を見せつけられたのはモニタリングの力。  炉内の状況は日米、東電何れも分からないが、アメリカは1,800m上空の無人偵察機グローバル・ホークから 『各炉の温度・放射線量』 を常時把握し、その他何千ものモニタリング・データを日本側に逐一知らせています。 情報力の高さだけでなく、その情報を惜しみなく日本に与えてくれていたことに驚きます。これに対して日本の致命的なインテリジェンスの欠陥 = 『上がらない、回らない、漏れる』
   ▲日本では、まず下から上に上がらない。 上も上で吸い上げる力が弱い。
   ▲政策トップが戦略目的とゲームプランを明確に持っていない。
   ▲各省全部バラバラ、そしてタコ壺だから回らない。
   ▲従って『統合的アプローチ = 政府一丸となって取り組む』 のが苦手
   ▲大事な機密情報が漏れやすい
   ▲不都合な情報は上げさせない、回さない=『政治的官僚的 “ベストケースシナリオ症候群”』

6.   情のリーダー、非情のリーダー
チャールズ・カストナーは第1原発吉田所長と第2原発増田所長を高く評価
○吉田所長は、西郷隆盛的な “情のリーダー”  『第一はヨシダがいたから、あの程度で済んだ』 と言われます。 最も有名なのは、炉心冷却水が供給できなくなり、残りは海水を注入せざるを得なくなっているのに、何を考えたか菅元首相が 『被害が拡大するので海水を停止しろ』 と東電に命令し、吉田所長が 『テレビ放映の前では[海水停止!] と命令するが、絶対に海水冷却は止めるな!』 と、内密に指示を出していたことです。 これにより壊滅的破壊・日本滅亡を免れました。
カストナーはこれだけでなく 『ヨシダの部下たちはヨシダに心服している。』 と強い印象を受けたと述べています。吉田所長は毎日五時に皆を集めて少しでも前進した事があると必ず褒め、日々部下達を鼓舞激励しました。
2013年7月9日、福島第一原発の吉田所長は、食道ガンで亡くなられました。恐らくは 『死』 以上の苦しい責任感と猛烈なストレスに苛まれた2年半で、身も心もボロボロだったのではないかと思います。  あの大災害にもかかわらず平和な毎日を過ごせている日本人の一人として、深く感謝するとともに心からご冥福をお祈りします。

○増田所長は、“冷静な非情のリーダー”  「マスダがいたから、第二は助かった。 危機に陥った第一原発から電源車を回してほしいという要請があったとき、マスダはこれを拒否し共倒れを防いだ。 危機管理という面でマスダは際立ったリーダーだ。」 と述べています。

今回の原発事故で『日本の現場は強いがトップはだめ』 という評価が海外で染みついたそうです。 私達は福島第一原発事故から大いに学び、次の大災害に備えることが重要なのではないでしょうか。

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