2024年5月10日金曜日

10. 心美しき人 vs カラスより厄介な人

 1. 35年間 1個人宅に押付けられたゴミステーション

 あるとき、良く一緒に散歩をするBさんから相談がありました。

「最近私達のゴミステーションのカラス被害が大きくなっている。 利用する10世帯は分譲以来35年間、Eさん宅前にゴミステーションを固定しており心苦しく申し訳ない。できれば他自治会のように公園側歩道上に設置できれば、負い目がなくなり有難い」



これは至極当然な提案なので、早速市役所の4関係部署(市民生活課、クリーン推進課、公園管理課、土木管理課)に相談して以下の回答を得ました。

『この道路は市道であり、車道・歩道ともに市役所が所有・管理しています。ゴミステーションの位置は利用する住民の方が話合いで決めてください。交通安全で一番妥当と決められた位置で適切に管理されるなら、市役所として特段の制約条件はありません。この周辺自治会は公園側歩道上に設置されており、個人宅前よりも公園側が妥当ではないでしょうか。ゴミ回収上も他町会と同じ公園歩道側に統一されれば有難いです。』

「これなら反対する人はいないはず」と安心したのが浅はかでした。

2.多数決に従わない厄介なひと

市役所のコメントをもとに【公園側に移設する。これを機にカラス対策万全なパイプネット式 カラスいけいけを取り入れる】 趣旨のアンケートを実施しました。



「是非そうしてほしい」という方が大半でしたが、「35年前の分譲時から今の位置と決まっている」とIさんが譲らず一歩も前に進みません。そこで関係者に何回も集ってもらい、忌憚のない意見交換会を実施しました。

3.心美しいEさん述懐に感動

【分譲以来35年間 私の家の前に設置固定されています。20年前に自治会長になったとき、今回と同趣旨のアンケートをとりました。 『私の家の前で構わないが公園側に移設したい。地区端の現位置は、ゴミ当番の方の目が中々行き届かず後片付けが不完全で、カラスが荒らす毎に私が清掃し水を流している。そういう実情を知ってほしい』と。

その時の移設案には「9人が賛成、1人が反対」でしたが、Iさんが「分譲時に今の位置にゴミステーションがあるという条件で購入した。移動は契約違反だ」と受け入れてくれません。分譲会社に確認しましたがそのような事実はなく思い込みです。しかしIさんは絶対に折れませんでした。世の中には9:1でも通らないことがあるんだ・・とあきらめ自治会を退会しました。

私の若いころ「東京都のゴミ戦争」にショックを受けました。杉並区のゴミ持ち込みを江東区が拒否したのです。人間が生活する上でゴミは必ず出る厄介者ですが、自分が出すゴミを「自分の地区で処理するのは嫌だ。よそで処理してほしい」というのはエゴでしかありません。それ以来、自分の出すゴミで人様に迷惑を掛けたくないと思い、ゴミステーションを35年間受け入れ、回収車が来た後は必ず清掃、水流しをしています。】

この話に誰もが感動する中、唯一反対のI奥様はそれがどうした! 分譲会社のパンフレットでゴミステーションは今の位置に決まっている。公園側に移すと道路横断しなければならず断固反対」と譲りません。世の中にはこういう他人の迷惑や苦労を顧みない方もいるのです。こういう方とは議論しても進展はありません。『ゴミステーションは利用者の合意の上で決まる。分譲後の分譲会社には位置を決める法的権限はない』 と道理を諭しても受け入れないので「多数決9:1で決定」と議論を打ち切りました。(ちなみにIさんは憤慨して、会議後自治会を退会しましたが、移設したゴミステーションはしっかり利用しています)

4.「総論賛成 各論反対」の厄介な人 (公園側でも自宅前は拒否)

 「公園側に移設。カラス対策万全なパイプネット式  カラスいけいけ” 採用」は決まったのですが、新たな「公園側のどの位置にするか」が決まりません。

 ゴミ袋を運ぶときには必ず道路横断するので一番交通安全な位置=横断歩道の近くに設置(但し収集車の作業上、横断歩道から5m以上離す)」を市役所も警察も推奨します。従ってこの線で話を纏めようとすると、BさんCさんが頑強に反対するのです。特にBさんは本件の言い出しっぺなので「公園側なら我が家の前でいいよというはず」と思っていた私は「何故?元々あなたが言い出したことだ。 関係のない私が何故こんな事を前面で調整しなくてはならないんだ?」と、35年間仲良くしていた彼に対し人間不信に陥ってしまいました。

【公平案

Bさんの大反対で目途が立たなくなったので「それなら公平に」と道路側5軒の公園側に1年ごとに移動する案を提案しました。市役所クリーン推進課の規定ではゴミステーション直近宅の同意書が必要ですので、毎年の移動申請・同意書が必要となりますが大した手間ではありません。・・ところが、これにBさんは猛烈に反対するのです。



Bさんは、A4 2枚にびっしりとその理由を書いて、他の意見は全く聴く姿勢を見せません。その趣旨は『横断歩道近くでは収集車が作業する間、車線変更する後続車で横断者が危険。横断歩道から50m以上離すべきだ』と主張しますが、要するに自宅前は嫌なのです。

「収集作業は2日に1回精々1分で問題ない。むしろ50mも離すと②となり今まで通りEさんの前となる。恐らく全員が回り道となる横断歩道は使わず、自宅前道路を横断するので、交通安全上遥かに危険」と、市や警察の指針を説得するのですが、全く聞く耳を持ちません。

5.「総論賛成 各論反対(公園側でも自宅前は拒否)

 Bさんは苦し紛れから『何故車道側宅だけの議論になるんだ。奥の人たちも公平にすべきだ』と訳の分からないことを言い出しました。「よし! これは使える。奥の人も公平に関与・・それならば4軒ずつが使用する駐車スペースの真中延長線の公園側2か所とすれば反論できない筈」と次の案を提案しました。


ところが、BさんだけでなくCさんも強烈に拒否します。「に決まっても設置同意署名はしない」とガンとして受け入れません。その本音は「たとえ公園側でも、自分の家の前にゴミステーションを置きたくない。今まで通りEさんの公園側にすればよいではないか」というエゴ丸出しでした。私は『35年も嫌なことを人に押し付けながら、今後も押し付けようとするIさん、Bさん、Cさんのような自己中心的な考え』は絶対に許せません。「それなら一番公平な、エリアの真ん中にしましょう」と次の案を提示しました。 

6.「誰も反対できない公平案はないか?」

 私は別の地区に住んでいますので、同じ自治会にこのような「譲り合い、助け合う気持ちのない人たちがいる」ことに気づきませんでした。でもここで匙を投げてしまっては、今まで通りEさんに理不尽な負担をかけることになってしまいます。

 この件に関してFさんは最初から私と同じ思いでした。そこで最終案として「地区の真中の公園側とする。ただしCさんは設置同意署名しないので、非会員のDさんに署名をお願いして、拒否されたらFさん宅の前公園側とする。」という事になりました。もしFさん宅前になったら、全員が遠くなりますが自宅前が嫌なので仕方ありません。



そして会議終了後、早速Dさん宅に趣旨説明に行きました。非会員なので断られることを覚悟していましたが・・・「いいですよ。ゴミはうちも沢山出しますので」と、ニコニコしながらその場で署名してくれました。(嬉しいことにDさんも私も同姓の安藤です!)

 そしてつくづくと思いました。「35年間嫌な顔もせずゴミステーションを受け入れてきたEさん、二つ返事で合意してくれたDさんは自治会退会者。一体自治会とは何の為にあるのか?」 ・・

7.そして1年、皆が気持ちよく利用し、カラス被害ゼロ

 が決定した会議の後、C夫婦が我が家を訪ねてきました。「何の用かな?」と応対すると、怖い奥さんが 「に決まったけど、公園側でも中心線から1mほど Dさん側に移動してほしい。私の家側にはみ出さないで欲しい」と要求されます。 当然(何を非常識な事を言ってるんだ!)と怒鳴りたくなるのを抑え「 私には何の権限もないので無理です。会議の総意で中心に設置すると決まりましたので変えられません」と答えると「そうですか、わかりました!」とプイッと帰っていきました。その奥さんから退会を申し出されています。・・私は現役時代「真の日本人たれ! 大事なのは互譲互助、無我無私だ!」と創業者理念を叩き込まれてきましたので、今回は本当に信じられないことばかりでした。

 月水金の朝この付近を散歩しますと住人の皆さんが気持ちよく利用されています。「カラスいけいけ」は、安価でカラス対策はほぼ完璧なので、ゴミ袋が引き出されて食い荒らされるトラブルは皆無になりました。 昨年の今ごろ不毛の議論を続けていたことが夢のようです。「どうしてこういう便利さ、気持ちよい対応を拒否するのだろう」という思いは封じて、この平和な風景を心から楽しんでいます。




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