3月から経団連 就職協定下の採用活動が本格的にスタートしました。
2021年度から就職協定は廃止となり、各社採用活動自由となりましたが、採用スタッフを大幅増員出来るわけでもなく、大半の企業は従来の体制で従来の時期に採用活動するものと思われます。それゆえ学生諸君は、少し早めから自分の進路を決め、各社の情報を集め、着実に準備しておく必要があります。
特にコロナ禍の終活活動は、各社のネット情報と採用部署へのタイムリーな連絡・申請が重要となります。
私は昨コロナ禍前は、8月のSPI基礎講座から、1・2月のエントリーシート(以下ES)・面接対策講座まで、3年生の就活準備講座を担当してきました。特に某工学系大学の40~50名(学年1300名に対して行ったES・面接概説講座では理解が深まらず自信のない学生たち) に対して、2月に行った1万円/日の就活直前特別講座では、時間をかけて懇切丁寧に指導しました。学生達にとってバイト2日分にも相当する高額受講料を設定したのは、受講学生の真剣度を求める由縁です。
果たして参加したのは、『自分に自信がなく、表現力・文章力に劣等感があり、対話が苦手で、この機会に何とかしたいと切実に思っている学生達』 ばかりでした。最初の課題は、エントリーシート 『自己アピール400文字文の作成』 ですが、1~2時間たっても2行くらいで筆が止まって進みません。白紙の状態で固まってしまっている学生が10人くらいいます。そういう学生に個別に話しかけ、小・中・高・大学で印象に残ったこと、クラブ活動や家庭での出来事などを問いかけ、ちょっとしたエピソードなどを掘り下げて自己アピールの文章に導いていきます。
そうして受講生たちが作成したES・自己アピール例を次に紹介します。 正直これが1~2時間かけても2行位しか書けず固まっていたあの学生の文章か?と、今まで真面目に頑張ってきたことに本当に驚き感動します。
1. K君(機械科)
私の強みは、目標実現の為に具体的計画を立て実行努力することです。
私は大学に入ってから卓球を始めましたが、他の部員は中学・高校から部活をやってきており、私が一番下手で毎日悔しい思いをしました。そこで練習量を増やし、皆が週2日のところを私は週5日練習しました。また毎日ノートをつけて、日々自分のレベルを分析し、克服すべき課題と練習方法を設定し、達成度、次の課題などを克明に記録していきました。その結果2年生になったとき大学内で優勝しました。
この経験から、どんな事でも例え最低のレベルでも、しっかりと計画を立て努力を積み重ねればトップに立てることを学びました。私はこの強みを生かして、卓球器具メーカーシェアトップでスポーツ振興にも力を入れている御社で働きたいと念願しています。そして老若男女の区別なく楽しめて、健康づくりができる卓球の普及の一翼を担いたいと思っています。
2. S君(土木科)
私の長所は、目標達成に向かって地道に努力し続けることです。
私は高校時代テニスに打込み過ぎて勉強を疎かにしたという反省から、大学ではしっかり勉強しようと決心しました。また1年の時に「あの教授の研究室に入りたい!」
という目標を立てました。しかし通学時間片道2時間で自宅での勉強時間が足りません。そこで通学時間往復4時間を勉強時間と定めてしっかりと予習復習に取り組みました。その甲斐あって3年までの成績は200人中9位の好成績を収め、念願の一番人気の教授の卒論ゼミに入ることができました。
この長所を生かして、県庁の土木科に勤務し、老朽化が心配される橋梁・トンネル・道路等の土木構築物の寿命評価、建替えなど、県民の方々の生活基盤・インフラの再整備に貢献したいと思って当県庁を志願しました。
3.T君(電気電子科)
私の長所は、分析力と計画的な対処能力です。
私は3年間家庭教師をやってきていますが、その子供に合った指導を行い成果を上げてきました。その際大事にしたのは目的・目標・手段を明確にすることです。例えば中二で数学の苦手な中学生を担当した時、目的(より良い高校に合格するために)、目標(受験までに数学を苦手2⇒普通3にする)、手段(中1から苦手で避けてきたところを、教科書中心に重点的に復習する)という事を納得させ取り組んだところ、見事数学が3評価を貰えるようになり、希望の高校に合格させることが出来ました。こういう分析力・計画性・指導力はきっと御社の仕事でも生かすことができると思います。
4. D君(土木科)
私の強みは、困難なことでも集中して克服する真面目さです。
私は工業高校から大学進学しましたので、他の学生と比べて高校数学力が劣っており、最初大学の授業についていけませんでした。そこで中学・高校の数学教科書を最初から勉強し直し、分からないところは先生や友人に教えてもらって数学力の向上に努め、ほぼ2年までに克服して授業についていけるようになりました。
そういうハンディがありましたが、小学校から続けているテニスも続け、勉強と運動が両立できるように頑張り、両方とも好成績を維持できるようになりました。このように私は困難な状況でもあきらめず工夫して努力し続ける我慢強さがあり、御社に就職してもどんな困難にも立ち向かって克服していく自信があります。
5.I君(機械科)
私の強みは、分析力・判断力・課題対応力です。
長年取り組んでいるテニスで実例を示しますと、私はダブルスを得意としています。ダブルスではお互いが息を合わせて対応することが必要ですが、私は試合で組む相手の得意なのはストロークなのかボレーなのかを、早い段階で分析・判断します。
そしてペアの不得意な部分を自分がカバーするようにして弱点をなくして好成績を収めてきました。こういうことは会社で仕事をするときも同じではないかと思っています。仕事は色々な人と組んで遂行することになりますので、お多大の弱点や強みを補完しあっていく私の強みは、きっと御社の仕事でも生かせると思っています。
6.N君(電気電子科)
私の長所は、人の気持ちがわかり、何事も協力して推進することです。
私は高校時代から、老人ホームサポートなどの地域ボランティア活動に取り組んできました。最近はツアーでカンボジアの子供達との交流に参加ました。そして極貧の中にあっても明るく友好的な異国の子供たちに、逆に私の方が色々なことを教わりました。その中で一番大事なことは、『ボランティア活動は、相手の協力があってこそ成立するのだ』
という事に気づかされたことです。そして私自身の人間の幅が広がったと感じました。 こういった体験を通して培ったボランティア精神を生かして、市役所に勤務して市民の方々の要望に耳を傾け、より暮らしやすくするために働きたいと思って志願しました。
この就活直前講座を担当して痛感するのは、『自分に誇るべきところは何もない』 と沈みこんでいた内向的な学生達が、本当は素晴らしい素質を持ち、人知れず頑張ってきたという事です。彼らは自分に厳しく、それゆえに内向的で目立たないように過ごしてきたという共通点があります。 私達企業人OBは、そういう真面目な努力家の学生こそが、実社会で光を放つ存在に成長し、本当の活躍をするということを知っています。
最後のアンケートで、ほぼ全員の 『この講座に参加して良かった!』
という記述に接するたびに、「この学生の周りには、悩みを聴いたり、相談したり、適切に指導する人がいないのだろうか? 先生や友人や親兄弟は、日頃こういった大事な会話をしていないのだろうか?」
と疑問に思います。 一人でも多くの “大人” が、若者達に接して話しかけ、会話を通じて彼らが自分の長所や本質に気づき、成長するきっかけになって欲しいと痛感します。
学生が 『自分はどういう人間か?一生の仕事として何が自分に向いているか・・』 と、まだまだ迷っている中での就活です。仕事の選択で一番大事な事は、大雑把でも自分なりの夢(こういう人生を歩きたい)、目的(何のために働くのか?)、目標(その企業で働くことによってどういう人間になりたいか?)という仕事・人生観を持つことです。 是非次の 「職業と人生」 を参考にしてほしいと思います。
しかし既に本格的な採用活動はスタートしており、まずは希望企業へのエントリーが必要です。そしてSPIテスト、面接へと息つく間もなく続き、並行して何社も受験することになりますので、内定獲得までは大変な数か月です。
是非このブログを参考にして、ありのままの自分に自信を持ちつつ、輝かしい未来に向けての力強い一歩を踏み出して欲しいと思います。
〇エントリーシート(ES)とは
エントリーとは、「私は貴社の採用試験を受けたい」 と意思表示することです。
この行為を受けて、初めてその会社に対する就職活動がスタートします。沢山の学生がエントリーする企業では、応募者全員を面接することができません。そこで企業はエントリーシートにより、応募者の入社意欲や人物像、論理的な思考力、文章表現力等を確認し、採用候補者の絞り込みを行います。
従って、エントリーシートは就職活動の第一関門であり、ここを通過しないと先に進むことはできません。徹底した自己分析や企業研究により、入社に対する思いのこもったエントリーシートで採用担当者の心をつかむ必要があります。
また近年、せっかく苦労して就職しても、自分が思っていた仕事と違うという理由で、すぐにやめてしまう人が増加しています。これは本人にとっても企業にとっても不幸なことです。このような事が起きないようにするためには、自分がどういう人間で将来どのような人間になりたいのかを深く掘り下げて自己分析し、自分がどのような仕事に向いているかを知ることが大事です。
その自分を企業の採用担当者に理解してもらうためには、抽象的なことではなく、自分の体験やエピソードを引用しながら、具体的に自分の長所や短所、克服するために努力したことなどを説明する必要があります。
この時期の採用担当者は時間がいくらあっても足りず、沢山の学生のESを全部読むわけにはいきません。そういう多忙な採用担当者の目を留めるには、『読んでみたい』と思わせるエントリーシートにする必要があります。そのためには、内容は勿論ですが、以下の構成・体裁面でも以下のような工夫・配慮が必要です。
(1) 結論を先に書く
(2) 具体的に書く・・・(✖努力しました 〇どのように工夫し努力したか)
(3) 具体的数字を入れてアピールする
(4) 思考過程がわかるように書く
(5) 見出しや箇条書きで読みやすくする
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