2024年11月8日金曜日

1. 人生の心構え(西郷隆盛と言志四録)

              令和6年9月24日(西郷隆盛命日に)

 世界混迷の中、日本のリーダーを選ぶ自民党総裁選終盤です。
今後増々 中露朝の強権独裁国の脅威に晒される日本のリーダーに必須な資質・使命は『国民の生命と財産、領土・領海・領空・資源、国家の主権と名誉を守り抜き、発展させること』『世界平和に貢献しリードできること』です。
 9人も立候補しながらこのことに言及する候補者は少なく、果たして混迷を乗り切れる真のリーダーが選ばれるのか本当に心配な総裁選です。(中身空っぽの43歳、エセ正義の反対居士、国益より親中etc.・・)
 160年前の幕末、今と同じような国家存亡危機に20~30歳代の若者が命を懸けて近代日本を作り上げました。その代表格の西郷隆盛は次の言葉を残しています。
「命もいらぬ、名誉もいらぬ、官位や肩書も金も要らぬ」という人は、始末に困るものである。だが このような始末に困る人物でなければ、困難を共にして国家の命運を分けるような大きな仕事を成し遂げることはできない。真に道理を行う人、正しく生きるという覚悟のある人物でなければ、そのような精神を得ることはできない。
 経済再生・国防・憲法改正・皇室継承などの重要問題を直視し敢然と改革を進めるリーダーが出現しないと日本滅亡は必至です。その真のリーダーにふさわしい人は誰か? 私は高市早苗氏しかいないと思います。「出でよ、待望の日本のサッチャー!」です。
 また私達国民一人一人がリーダー任せでなく、旧態依然の老人社会から脱却し、生涯現役の気概で社会に貢献することが重要です。
 

西郷隆盛は明治維新最大の功労者です。もし彼がいなかったら明治維新は30年以上遅れただろうと言われます。明治の国際人 内村鑑三が名著 『代表的日本人』5人のトップに据えて英文で世界に紹介した、国際的にも有名な大英傑です。 (かってケネディ大統領はこの本を読んで上杉鷹山を知ったという事です。) 


私は悩める新入社員時代に、林房雄の「西郷隆盛」全30巻を貪るように読み「西郷さんは、どうやってあの偉大な生き方を身に着けたのだろう?」と不思議に思い模索しました。
 そして西郷さんの人生を根本から変えたことが三つあることが分かりました。
 


【1】.一つは、心から敬愛していた最大の同士『橋本左内』を安政の大獄で失ったことです。西郷さんは『今の日本に最も必要な人物を死罪にした井伊直弼は万死に値する!』と悲憤慷慨しています。そして左内から最後に貰った手紙を20年後の西南戦争で死ぬ迄大事に保管していました。 ふたりは、西郷29歳、左内22歳のとき初めて対面しました。西郷さんは7歳年上で、左内は女性のように優しく弱々しく見えましたので、最初軽くあしらっていましたが、やがて国事を論じるに至って、驚嘆し、敬服し、心服するに至りました。 そして4年後に左内が26歳で刑死した後も、20年後城山の死まで左内への敬慕は変わらなかったのです



【2】.二つ目は、左内と同様に直弼から死罪宣告されて逃げ場を失った志士の月照和尚を薩摩藩に招きながら藩に拒否され、二人は錦江湾に入水自殺を図ったことです。西郷さんは助けられ奇跡的に蘇生しましたが、同士月照は帰らぬ人となりました。自分が生き残り同士は死んだ事を知った時の西郷さんの衝撃は如何ばかりだったか・・これを境に西郷さんは生死を乗り越えた天命を模索、命もいらず名もいらぬ、無我無私の "敬天愛人"の人生が始まります。


【3】.三つ目は、西郷さんが若い頃に熟読し座右の銘とした佐藤一斎の「言志四録」です。 全1133条の中から特に101条を選んで書き留め、死ぬまで肌身離さず愛読し 実践したということです。その中から今回は若者が大事にしてほしい27ヶ条を選んで紹介します。

1.永遠の若さ・知力意欲を維持する

少年時代に学べば、壮年に役立ち何事かを成し遂げる。壮年期に学べば、老人になってからも衰えることはない。老年期になって学べば、世の中の役に立ち、死後もその名は残る。

2.暗闇でも迷わない生き方

人生は「暗夜道を一つの提灯を提げて行くようなもの」である。唯一の灯火(信念)を信頼し進めば、どんなに暗くても心配はない。

3.知識を血肉にする方法

書物は無目的に乱読せず、必ず正しく選択し熟読すること。大事な事は、読んで得た知識を生涯にわたって活用すること。

4.知行合一の実践

心の役割は 『思うこと、その思いを実行する工夫する事』である。思いを集中すると、その事が益々明確化、真剣に取組むようになる。

5.心の5悪の克服

① 心がざわついて落着かないと、行動を誤ってしまう。

② 心がたるんでいると、物の見方が浮ついてくる。 

③ 心に不満があると、気力が萎え、いじけてくる。

④ 心が空ろになれば、顔形までだらしなくなる。

⑤ 心が驕ると、顔色が傲慢になってくる。

6.いつでも気分良く仕事をする方法

人と共に仕事をする時、人に楽な仕事を、自分は難儀な仕事を担当する事。仕事は苦しくとも気分は爽快だ。自分が楽な仕事を担当し、人に面倒な仕事を回せば、楽ができるが気分が優れることはない。

7.リーダーが学ぶべき3徳

人の長たる者が学ぶべきことは、「智・仁・勇」 である。 「智者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は恐れず」 で生きれば、生涯道を誤らず、驚天動の事業も成遂げ、後輩の立派な手本となる。

8.天に仕える気持ちで行動する

 物事は如何なる場合も全て天に仕えるような気持ちで行う事が大事である。 他人の目を意識してはならない。

9.常に人の長所に注目

人に接する時は、長所を見るように努め、短所を探し出してはならない。短所を見ると優越感を覚え驕りが生じ自分の為にならない。反対に長所を発見すれば、自らの短所が自覚でき成長の糧となる。

10.“今ここで”を大事に生きよう

時間は時々刻々と変わるが、心は『今ここに』据えおくべきである。時機が到来していない事は実現不可能で、過ぎ去ったものを追い求めても手にはいらず「心の不在」を促進するだけである。

11. 才能と度量について

人は才能があっても度量に欠けていると他者を包容することは出来ない。逆に度量があっても才能に欠けていると物事を成し遂げる事は出来ない。二つ兼ね備える事ができないなら、才能を捨て度量ある人間になるべきだ。

12.志を持って生きよう

① 志のある人間は刃物の如き者だから悪者は怖がり近づけない。

志のない人間は切れない鈍刀だから、子供にまで馬鹿にされる。

② 取るに足りぬ事を考え雑音に惑うのは志が確立していないからだ。

一つの志が確立していれば、あらゆる雑念は霧散霧消する。

③ 志高く明確、力の入れ所は勘所を押え適切で、仕事は精密で

あるべきだ。更に努力目標はできるだけ遠大なものでありたい。

④ 口癖のように『忙しい』と人は言うが、その実態は本当に必要な

仕事は十人中一人・二人で、残りはあまり役に立たない事に汲々

している。志のある者は、こんな「穴」にはまり込んではならない。

13.天から賦与の使命を考えて生きよう

「天は、なぜ私を世に送出し何をさせようとしているのか。自分は天の所有物だから、天職がある筈だ。この使命を果たさなければ必ず天罰を受ける」 と考えると、ぼんやりと生きてはならないと悟るだろう。

14.心の暖かい人になろう

頭脳は正しく判断ができるよう冷静でありたい。 心は人の気持ちが共感できるよう暖かくありたい。 胸は人を受け入れられるよう虚心坦懐でありたい。 腹は物に動じないよう胆力を充実させたい。

15. 爽快な人生を送ろう

そしられ誉められ、成功・失敗は、人生に付き物の取るに足らないものだ。心からさらりと一掃しよう。 そうすれば晴天白日、爽快な人生を獲得できる。

16.自分を恃める人になろう

一人前の人間は、自分自身の持てる力だけを武器に生きるべき。決して他人の知恵やお金を当てにしたり頼りにしてはならない。驚天動地の大事業も『自分自身を恃める人』が生出すものである。

17.良心に恥じない気持で行動

事を成す場合、「おろそかにしない気持ち」で取組めば失敗しない。「良心に恥じない気持」で行動すれば人から非難される事はない。

18.真に大志ある者は

本物の大志を抱く者は、どんな細かいことでも手を抜かない。本物の遠大な計画を持つ者は、どんな些細な事も軽んじない。

19.率先垂範、徳をもち接しよう

口先だけで人を諭しても、誰も従わない。 自ら先頭に立って実行すれば、人は皆見習う。更に徳をもって感化すれば、一人残らず自然に心服してついてきてくれる。

20.自分の言動を客観的に視る

自分の言葉は自分の耳で聴き、自分の行動は自分の目で視る。自分自身の言動を客観的に聴き、客観的に視て、自分の心に恥じる所がなければ他人も必ず心服してくれるだろう。

21.人生の暁にやっておくべきこと

人は若く元気盛りの時は、時間の大切さを知らず惜しもうとしない。40歳を過ぎると時間の大切さが分かってくるが精力が衰え始める。それ故、若い時に志を立て奮励努力しなければならない。それが出来なかったら後で後悔しても間に合わない。

22.辛苦を避けず仲間を大事に

辛苦は、人の心を堅固にする。艱難を共に経験してきた仲間達は交友が緊密であり、いつまでもお互い同士忘れることがない。

23.「不得意未熟」は不幸に非ず

得意が多く不得意が少ないと真剣に取組まず思慮分別不足になる。反対に得意が少なく不得意が多いと失敗しない様注意するから思慮分別が豊かになる。 この方が幸せというものだ。

24.信用を得るには

人の信用を得るのは困難。人は言葉を信じず、その行いを信じる。行いよりその人の心を信じる。だから信用を得る事は簡単ではない。

25.伸びる後悔、滅びる後悔

『悔い』は善悪の分かれ目。立派な人は悔いる事により善に向かうが、小人は悔いて自暴自棄になって悪を後追いする。これを良く見極め悪循環を断切り、志を立てて悔いを従えるよう努めよう。

26.見識の高い人の一言の重み

大きな事ばかり言う者は度量が小さい。威勢の良いことばかり言う者に限って臆病者である。他方発言が控えめで元気でもないが、言葉の含蓄がある人の多くは、見識も高く度量も広い人物である。

27.大事を成し遂げる人

【静】を好み【動】を嫌う者は横着者で臆病者。反対に【動】を好み【静】を嫌う者は、あわて者で軽薄な人間である。控えめで静にも動にも偏らず、軽薄でも臆病でもない人物こそが物事を冷静に処理し、大事を成し遂げることが出来る。



江戸時代末期の大航海時代、世界は アフリカ⇒インド⇒東南アジア⇒中国と欧米に食蚕され、植民地拡大・収奪が進行していました。そういう時代に、日本の植民地化・隷属化に危機感を抱いた若者達が、自らの夢も命も家族をも投げ打ち、近代日本の確立に奔走してました。佐久間象山・吉田松陰・橋本佐内等の先駆的救国の志士が安政の大獄で倒れた後も、坂本竜馬・高杉晋作・木戸孝允・西郷隆盛らの若者達が次々に綺羅星のごとく輩出し、生死を超越して行動しました。 



これらの志士の伝記を読むと、武士としての徹底した家庭教育や四書五経の素読・深耕のほかに、若い頃、佐藤一斎の「言志四録」 を熟読・咀嚼し、自分の人生の使命を考え、心の鍛錬をして自らの行動指針にしてした事が共通しています。そこに書かれている事は、現代の経営学者やトップマネージメントが述べている最新の経営理論と全く同じであり、200年も前に書かれ、またその本に若い志士達が共鳴して明治維新へと向かった事に驚くばかりです。 

混迷する現代に生きる私達も「佐藤一斎」をしっかりと学び 「生きる意味、自分の人生の使命を考えながら生きること」が必要だと思います。そして一人一人が日本人らしさを身に着け、私達一人一人が「真直ぐに生きる心の美しい日本人」になりたいものです。

「面従腹背が官僚としての私の座右の銘」と恥ずかしげもなく述べる元文科省前川次官などのような劣化官僚を全て清掃・放逐したいものです。 

参考 :『佐藤一斎言志四録』山田準/五弓安二郎:著(岩波文庫)

   『人の上に立つ人の勉強 佐藤一斎』坂井昌彦:著(三笠書店)

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